2016/12/15
ASTをツリービューで表示する
この記事はPowerShell Advent Calendar 2016の15日目です。
前回はPowerShellのASTの概要を解説しました。今回は前回の補足というか応用的な内容になります。
前回、スクリプトブロックからどのようなASTが生成されるのか、図で書きました。そもそもあの図を作るにあたって、ASTの構造を視覚的に把握したかったので、そのためのスクリプトを書きました。
PowerShellで木構造を展開表示する方法は色々ある(※)かと思いますが、今回はJSONとして出力して、表示については他のアプリに任せることにしました。
※Format-Customのデフォルトビューは意外と使える
ただし、ASTオブジェクトをそのままConvertTo-Jsonコマンドレットに渡すわけにはいきません。というのも、AST構造を再帰的に展開するには、探索の深さ(-Depth)を大きくしなければいけませんが、そうするとASTではないオブジェクトも逐一展開してしまい、現実的な時間内で終わらなくなってしまいます。
そこで、ASTオブジェクトそのものをJSONにするのではなく、必要なプロパティのみ再帰的に取得したカスタムオブジェクトを生成し、それをJSONにする方針を取りました。その成果が以下のコードです。(using namespace節を使っているので、v5以上必須です。)
using namespace System.Management.Automation.Language function GetAstInner { param([Ast]$ast) end { $base = [ordered]@{ ExtentText = $ast.Extent.Text AstName = $ast.GetType().Name } $children = [ordered]@{} $leaves = [ordered]@{} $ast.psobject.Properties | ? Name -notin Extent, Parent | %{ $type = [type]($_.TypeNameOfValue) $propValue = $ast.($_.Name) if($type.IsSubclassOf([ast])) { if($null -ne $propValue) { $children[$_.name] = GetAstInner $propValue } } elseif($type.IsGenericType -and $null -ne ($type.GetGenericArguments() | where{$_.Name -eq "Tuple``2"})) { $asts = @() foreach($next in $propValue) { if($null -ne $next) { $asts += [pscustomobject]@{ Item1 = $( if($null -ne $next.Item1 -and $next.Item1 -is [ast]) { GetAstInner $next.Item1 } ) Item2 = $( if($null -ne $next.Item2 -and $next.Item2 -is [ast]) { GetAstInner $next.Item2 } ) } } } if($asts.length -ne 0) { $children[$_.Name] = $asts } } elseif($type.IsGenericType -and $null -ne ($type.GetGenericArguments() | where{$_.IsSubclassOf([ast])}) ) { $asts = @() foreach($next in $propValue) { if($null -ne $next) { $asts += GetAstInner $next } } if($asts.length -ne 0) { $children[$_.Name] = $asts } } else { if($null -ne $propValue) { $leaves[$_.Name] += $propValue.Tostring() } } } [pscustomobject]($base + $leaves + $children) } } function Get-Ast { param([scriptblock]$ScriptBlock) end { GetAstInner $ScriptBlock.Ast } }
本来なら、50種以上あるAstクラスに応じてきちんと場合分けすべきなのですが、コードが長くなるだけなので、動的言語の強みを生かしてダックタイピング的な方法で下位ノードを再帰的に展開しています。
途中、IfStatementAstのClausesプロパティなどで用いられている、ReadOnlyCollection<Tuple<Ast, Ast>>型であることを確認するのに苦労してますが、多分もっといい方法があると思います…。他はAstオブジェクトそのものか、ReadOnlyCollection<Ast>を返すだけなのでそんなに苦労はないです。Ast抽象クラスに含まれているExtent、Parentプロパティ以外で、Astを要素に含まないプロパティに関しては、ASTの葉として解釈しています。
次にこのスクリプトを使って、スクリプトブロックをJSONとして出力します。
$scriptBlock = { param([int]$x,[int]$y) end { $out = $x + $y $out | Write-Host -ForegroundColor Red } } Get-Ast $scriptBlock | ConvertTo-Json -Depth 100 | Set-Content ast.json
サンプルとして用いるスクリプトブロックは、前回のものと同じです。これを先ほど書いたGet-Ast関数に渡して、結果をConvertTo-JsonでJSON化しています。この際、探索の深さを100としていますが、ネストが深いスクリプトブロックなどでは、もっと大きくする必要も出てくるかもしれません。
出力されたast.jsonを、JSON Viewerを使って表示してみたのが、以下のスクリーンショットになります。
色んなスクリプトのASTを表示して、楽しんでみてください。
ASTシリーズはもう少し続きます。次回はAST Visitorと静的解析のお話です。
2015/12/15
Web APIを利用する
この記事はPowerShell Advent Calendar 2015の15日目の記事です。
はじめに
前々回と前回は、PowerShellによるWebスクレイピングの具体的手法についてまとめました。ただ、スクレイピングはあくまで最後の手段であり、Webから何らかの文字列情報を取得するには、Web APIを用いるのが本道かと思います。
今回はPowerShellでWeb APIを用いるお話です。
Web APIとは
Web APIというのは、その名の通り、プログラムからWeb上のデータを取得したり、何らかのサービスの機能を実行したりするための、呼び出し方式を定めた規約です。
Web APIでは、HTTPリクエストに呼び出したい機能の内容を指定し、結果をHTTPレスポンスとして受け取るというのが一連の流れになります。
Web APIの主な実装方式としてはSOAPとRESTがありますが、このうち、XMLでリクエストを組み立てるSOAPは最近は廃れてきた感じです。
(PowerShellではSOAP APIはNew-WebServiceProxyコマンドレットで対応しています。が、今回は略。参考:PowerShell: ◆空港の場所と天気を調べる(New-WebServiceProxy))
最近はWeb APIといえばREST(REpresentational State Transfer) APIを指すことが殆どです。REST APIでは操作の対象となるリソース=URI(エンドポイントという)、呼び出し方式=HTTPメソッド(GET:データの取得, POST:データの作成, PUT:データの更新, DELETE:データの削除)、操作に対するパラメータ=クエリストリング(GETの場合)もしくはリクエストボディ(POSTの場合)、結果の返却=HTTPレスポンス(JSON、XML等)となるのが基本です。
また、RESTの呼び出しは基本的にステートレスなものとなります。要はセッション情報を持たない≒cookieを使わない、ってことです。
PowerShellではREST APIを簡便に利用するためにInvoke-RestMethodコマンドレットが用意されています。(ただしPowerShell 3.0から)
Invoke-RestMethodコマンドレットのパラメータ指定
Invoke-RestMethodコマンドレットのパラメータについては、実は前々回に取り上げたInvoke-WebRequestコマンドレットと同じです(IEのパーサーを使うことはないので、-UseBasicParsingも無いですが)。ただしREST APIの形式は前述の通りなので、利用するパラメータは限られてきます。具体的には
データ取得の場合
$response = Invoke-RestMethod -Uri エンドポイント(パラメータを含む) -Method GET
データ作成、更新の場合
$response = Invoke-RestMethod -Uri エンドポイント -Method POST -Body パラメータ(連想配列あるいはJSONやXML等)
となるかと思います。
その他にOAuth等の認証情報を指定する場合は、-Headers @{Authorization="認証情報"}のような指定も必要になることがあります。
Invoke-RestMethodコマンドレットのレスポンス
Invoke-RestMethodコマンドレットがInvoke-WebRequestコマンドレットと異なる最大のポイントは、レスポンス文字列の種類によって、自動的に出力オブジェクトの型が切り替わるところです。
私の調べた限りでは以下のような対応になっているようです。
レスポンス文字列の種類 | 出力型 |
XML | XmlDocument |
RSS/ATOM | XmlElement |
JSON | PSCustomObject |
プレーンテキスト | string |
利用の具体例
AED検索
Microsoft MVPのはつねさんが公開されている、AED検索はREST APIでAEDの所在地情報を検索し、JSONで結果を得ることができます。
例えば兵庫県芦屋市のAED一覧を取得するには、
$response = Invoke-RestMethod https://aed.azure-mobile.net/api/aedinfo/兵庫県/芦屋市/ $response | Format-Table Latitude, Longitude, LocationName, @{L = "Address"; E = { "$($_.Perfecture) $($_.City) $($_.AddressArea)" }} -AutoSize
のようにします。
ここで$responseには、JSON形式のデータをパースしてPSCustomObject化したデータが格納されるので、あとはFormat-Tableコマンドレットで見やすい形で出力してあげれば良いでしょう。
結果はこんな感じです。
AED検索APIと、去年のアドベントカレンダーで紹介した、Windows 位置情報プラットフォームを用いて現在位置を取得するGet-GeoCoordinate関数を併用して、「現在位置の最寄りにあるAEDをGoogle MAP上で表示する」なんてこともできます。
$location = Get-GeoCoordinate $response = Invoke-RestMethod "https://aed.azure-mobile.net/api/NearAED?lat=$($location.Latitude)&lng=$($location.Longitude)" Start-Process "http://maps.google.com/maps?q=$($response.Latitude),$($response.Longitude)"
ここではREST APIにQueryStringでパラメータ(経度、緯度)情報を渡しているところと、レスポンスから生成されたオブジェクトのプロパティ値をマップ表示の際のパラメータとして利用しているところに注目してください。
RSS取得
RSSやATOMもREST APIの一種と考えて良いと思います。
ここではこのブログのRSSを取得する例を示します。
$response = Invoke-RestMethod http://winscript.jp/powershell/rss2/ $response | select @{L = "Title"; E = "title"}, @{L = "Url"; E = "link"}, @{L = "PublishDate"; E = {[DateTime]::Parse($_.pubDate)}}, @{L = "Description"; E = { ($_.description -replace "<.+?>"). PadRight(50).Substring(0,50).TrimEnd() + "..." }}| Format-List
Descriptionの加工がやや適当(HTMLタグっぽいところを削除して50文字に切り詰めてるだけ)ですが、少し見やすくしています。結果は以下のように表示されます。
RSSの結果は、1エントリがXMLElement型のオブジェクトとして出力されるので、データの取扱いが比較的楽だと思います。
レスポンスがXMLなREST APIの良い例がなかったので省略してますが、基本的には前回取り上げた、XHTMLをXMLとしてパースする方法と同じやり方です。ただInvoke-RestMethodの場合は[xml]型アクセラレータによる変換は不要で、いきなりXmlDocumentオブジェクトが得られます。
現状の問題点
レスポンスがコールバック関数つきのJSONP形式であるとかで、JSON、XML、RSS/ATOMのいずれの形式にも適合しない場合はプレーンテキストとして出力されてしまいます。
その場合は、出力文字列を適宜加工した後に、[xml]型アクセラレータや、ConvertFrom-Jsonコマンドレット等により手動でオブジェクト化するようにしてください。もっとも、その場合は敢えてInvoke-RestMethodを使わずInvoke-WebRequestで充分ですが。
あとWeb APIというのは大抵(特にPOSTの場合)、認証を要するのですが、最近よくあるのはTwitter等でもおなじみのOAuth認証です。ところがOAuth認証は結構めんどくさい処理で、何らかのライブラリを使わないとしんどいです。残念ながらPowerShellの標準コマンドレットには存在しないので、自前で頑張って書くか、既存のライブラリやコマンドを利用することになるかと思います。
今回そこまで説明できませんでしたが、また機会があれば。
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