2014/04/26

小ネタですが。

まず、ダイナミックパラメータについてはぎたぱそ先生の記事を参照してください。要は、その名の通り動的に定義されるパラメータのことです。

ダイナミックパラメータは他の(静的な)パラメータの指定状態によってリアルタイムに定義されます。ValidateSet(値の候補リスト)だけではなく、パラメータの有無、パラメータ値の型やパラメータ名ですら変わり得ます。

一方、Get-Commandコマンドレットを使うとコマンドのパラメータや構文等の情報を取得する事ができます。しかし、ダイナミックパラメータは前述のような特性があるため、パラメータの有無、パラメータ名、パラメータ値の型が一意に定まりません。

この問題を解決するため、Get-Commandコマンドレットには-ArgumentListパラメータが用意されています。指定コマンドに与えるパラメータ値を-ArgumentListパラメータに指定すると、指定コマンド実行時にそのパラメータ値を指定した場合に定義されるダイナミックパラメータに関する情報が、出力結果に含まれるようになります。

例を挙げましょう。Get-Contentコマンドレットの-Pathパラメータは「位置パラメータ」、つまりパラメータ名を省略できるパラメータであり、パラメータ名なしで指定された一つめの値がバインドされます。つまり、 Get-Content C:\ とするとC:\(FileSystemプロバイダのパス)が-Pathパラメータにバインドされるわけです。(Get-Content -Path C:\ と同じ意味となる)

ところでGet-Contentコマンドレットは、FileSystemプロバイダでのみ有効となる-Encodingというダイナミックパラメータを持っています。「FileSystemプロバイダでのみ」というのはつまり、「カレントディレクトリがFileSystemプロバイダのパスであるか、-PathパラメータにFileSystemプロバイダのパスが指定されたとき」ということになります。

すなわち、 カレントディレクトリがC:\であったり、Get-Content C:\ と入力した瞬間、-Encodingダイナミックパラメータが定義されて利用できるようになります。

ではGet-CommandコマンドレットでGet-Contentコマンドレットの-Encodingダイナミックパラメータの情報を得るにはどうすればよいか。答えは、このダイナミックパラメータが定義されるトリガーとなるパラメータ値である「C:\」を-ArgumentListパラメータに指定してやればいいわけです。つまり 例えば

Get-Command -Name Get-Content -ArgumentList C:\ -Syntax

としてやると、Get-Contentコマンドレットの構文が

Get-Content [-Path] <string[]> [-ReadCount <long>] [-TotalCount <long>] [-Tail <int>] [-Filter <string>] [-Include <string[]>] [-Exclude <string[]>] [-Force] [-Credential <pscredential>] [-UseTransaction] [-Delimiter <string>] [-Wait] [-Raw] [-Encoding <FileSystemCmdletProviderEncoding>] [-Stream <string>] [<CommonParameters>]

のように表示され(※注:一部抜粋)、Get-Content C:\を実行するときに定義される-Encodingダイナミックパラメータも含まれていることがわかります。仮にHKLM:\等のFileSystemプロバイダ以外のパスを-ArgumentListに指定すると、

Get-Content [-Path] <string[]>[-ReadCount <long>] [-TotalCount <long>] [-Tail <int>] [-Filter <string>] [-Include <string[]>] [-Exclude <string[]>] [-Force] [-Credential <pscredential>] [-UseTransaction] [<commonparameters>]

のように表示され、ダイナミックパラメータが表示されないことが分かるかと思います。

さて、-ArgumentListは配列指定もでき、複数パラメータ値を指定した時の構文を調べることもできます。しかし位置パラメータ以外の場合、つまりダイナミックパラメータ定義のトリガーとなるパラメータにパラメータ名を指定する必要があるコマンドの場合はどうやら無理のようです。

以下はおまけです。ダイナミックパラメータのリストを表示します。-ArgumentListは指定してないので、カレントディレクトリのプロバイダの種類でのみ結果が変わります。

$cmds = Get-Command -CommandType Cmdlet,Function
foreach($cmd in $cmds)
{
    $params = $cmd.Parameters
    $dynamicParamNames = @()
    if($null -ne $params)
    {
        $dynamicParamNames = @($params.Values|?{$_.IsDynamic}|%{$_.Name})
    }
    
    if($dynamicParamNames.Length -ne 0)
    {
        foreach($dynamicParamName in $dynamicParamNames)
        {
            [pscustomobject]@{
                Cmdlet=$cmd
                Module=$cmd.ModuleName
                Parameter=$dynamicParamName
            }
        }
    }
}

まあ本題とあんまり関係なくなってしまったんですが、せっかく作ったのでということで。こういうのを見ると、PowerShellはコマンドもオブジェクトなんだ、ということが分かると思います。

2011/12/13

はじめに

この記事はPowerShell Advent Calendar 2011の13日目、そして私の2回目の記事となります。

今日のテーマは前回の続きで、PowerShellのバックグラウンドジョブの結果を読み取ったり、バックグラウンドジョブに値を与えたりして、ジョブと通信を行う方法を解説します。

ジョブから呼び出し元に値を返却する

ジョブの結果を取得するにはReceive-Jobコマンドレットを使用すれば良いと前回書きましたが、今回はジョブ側から結果を返す実際の方法を示します。

基本的にPowerShellのスクリプトやスクリプトブロックが呼び出し元に返却する値というのは、そのスクリプト(or ブロック)でパイプラインを通じて最終的にデフォルト出力に渡されたすべての値です。複数行に渡って出力されている場合は、呼び出し元にはその配列(object[])として返却されます。

ジョブにおいてもそれは同様で、基本的にStart-Jobなどで生成したスクリプトやスクリプトブロックが出力したすべての値がジョブの出力となり、呼び出し元からはReceive-Jobコマンドレットで受け取ることができます。

以下に現在の日付時刻を出力するサンプルを示します。サンプルなのでジョブなのに同期的な処理になってますがご了承を。

$job=Start-Job {
    Start-Sleep -sec 5
    Get-Date
}
Wait-Job $job|Receive-Job

複数だと以下のようになります。

$job=Start-Job {
    Start-Sleep -sec 1
    "Give me job."
    Get-Date
    1+1
}
Wait-Job $job|Receive-Job

この場合だと文字列、日付時刻、数値の3種類のオブジェクトが出力されますので、結果は長さ3のobject配列になります。そのためこれらの値を個別に取り出す場合は次のようにします。

$job=Start-Job {
    Start-Sleep -sec 1
    "Give me job."
    Get-Date
    1+1
}
$result=Wait-Job $job|Receive-Job
Write-Host $result[0]
Write-Host $result[1].ToString("yyyyMMdd")
Write-Host $result[2]

このように配列のインデックスで各値にアクセスできますが、これだと受け取り側での処理が分かりにくいと思われるかもしれませんね。

そこでお勧めなのが、このように複数値を返却するのではなく、カスタムオブジェクトを1つだけ返却するようにする方法です。

$job = Start-Job {
    Start-Sleep -sec 1
    $ret = New-Object PSObject -property @{
        String = "Give me job.";
        Date = Get-Date;
        Number = 1+1
    }
    $ret
}
$result = Wait-Job $job|Receive-Job
Write-Host $result.String
Write-Host $result.Date.ToString("yyyyMMdd")
Write-Host $result.Number

この方法ではジョブの中でNew-Objectコマンドレットでカスタムオブジェクトを作成し、それを返却しています。返却値は1つのオブジェクトでそのプロパティに値が格納されているのでドット演算子で値を参照できるようになりました。

ただしこの方法にも欠点があって、Receive-Objectで結果を参照するとき、ジョブが終了するまですべての値が参照できません。実はジョブが完了してない段階でも、Receive-Objectを実行するとジョブがそこまで出力した値を逐次取得することができるのです。よって

$job=Start-Job {
    Start-Sleep -sec 3
    "Give me job."
    Start-Sleep -sec 3
    Get-Date
    Start-Sleep -sec 3
    1+1
}

のようにしてジョブを走らせた後、適当な間隔で

$job|Receive-Job

を実行すると、それまでに出力した部分までを取得して書き出します。先程の例のように出力をカスタムオブジェクトでまとめてしまうとこの手法が使えなくなってしまいます。

どちらもメリット、デメリットがあるのでうまく使い分けると良いかと思います。具体的にはジョブの実行途中では結果を取得せず、ジョブ完了後の最終的な結果のみまとめて参照したい場合はカスタムオブジェクトで返却し、それ以外はそのまま随時値を返却するようにすればいいと思います。

さて、ジョブの結果を受け取る際にもう一点注意しなければならないことがあります。それはジョブが返すオブジェクトの型です。PowerShellのジョブ機能はリモーティング機構の上に構築されているというのは前回も書きましたが、その関係上、呼び出し元とジョブとの間でオブジェクトを受け渡しする場合は一度シリアル化され、受け取り側でデシリアライズされます。

オブジェクトのクラスもしくは構造体がシリアライズ可能(Serializable属性がついている)なら、PowerShellによりシリアル化→デシリアライズされたオブジェクトはシリアル化される前のオブジェクトと同一のものです。しかしそうではないオブジェクトの場合だと完全に元と同じオブジェクトには復元されません。

たとえば(Get-Process)[0]をジョブで実行するとSystem.Diagnostics.Processオブジェクトが得られますが、それをジョブの呼び出し元に返却するとDeserialized.System.Diagnostics.Processというカスタムオブジェクトに変換されます。このオブジェクトは各プロパティ値は(シリアル化可能なものだけ)保持しているものの、メソッド定義などは消失しているのでこのオブジェクトのメソッドを実行することはできません。

ちなみにSystem.StringクラスやSystem.Int32やSystem.DateTime構造体はSerializable属性がついているのでジョブの結果として取得しても元のオブジェクトと同一なので、メソッドなどが呼び出し可能です。

ジョブに呼び出し元の値を渡す

今度は逆の場合です。ジョブを走らせるとき、呼び出し元からジョブに値を渡す方法です。

$job = Start-Job {
    param($date,$value)
    Start-Sleep -sec 1
    "${date}の${value}日後の日付は" + $date.AddDays($value).ToString("yyyy/MM/dd") + "です。"
} -argumentList @((Get-Date),1)
Wait-Job $job|Receive-Job

このようにStart-Jobコマンドレットの-argumentListパラメータに、ジョブに渡したい値を指定すればOKです。複数ある場合はこのように配列指定も可能です。

ジョブ側ではparamキーワードで仮引数を指定しておけば、スクリプトブロック内で呼び出し元の値が格納された変数を使用できます。ここではparamを使いましたが、paramを使用しない場合は$argsに実引数が配列として格納されているので、これを利用するのでもOKです。

値を渡す場合でもシリアライズとデシリアライズが行われるので、その点だけは注意が必要です。

ジョブは呼び出し元と別インスタンスなので、呼び出し元に読み込まれた関数を参照することはできません。よってジョブでも呼び出し元で定義した関数を実行したい場合は同様に-argumentListで関数の実体であるスクリプトブロックを送ってやる必要があります。

function Get-Test
{
    "テスト!" + (1+1)
}

$job = Start-Job {
    param($sb)
    &([scriptblock]::Create($sb))
} -argumentList (Get-Item Function:\Get-Test).ScriptBlock

Wait-Job $job|Receive-Job

-argumentListでスクリプトブロックを渡すとStringにキャストされてしまうので、ジョブ内でそれをCreateメソッドでスクリプトブロックに戻してから実行演算子&で実行するという回りくどいことになってしまいました。関数にこだわらなければ呼び出し側でスクリプトブロックを作って変数に入れ、それを-argumentListに入れてやると少しだけ記述がシンプルになりますが、ジョブ内でスクリプトブロックを復元しなければならないのは同様です。

いずれにせよあんまり美しくないのでお勧めしません。こんなことをやるくらいならジョブの中あるいは -InitializationScriptパラメータの中で関数やスクリプトブロックを定義してやるか、関数を別スクリプトファイルに切り出して、そのスクリプトファイルをジョブ内で読み込むほうが良いかと思います。前者の場合だと呼び出し元とジョブ内で関数を共有することはできませんが、後者の方法だとファイルとしては分割してしまいますが可能です。

おわりに

今回はジョブと通信する方法として、ジョブから結果を出力したり、ジョブに値を渡したりする方法をまとめました。意外と落とし穴が多いので注意してください。

このシリーズはあと1回だけ続く予定です。お楽しみに。


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