2016/12/20
AST Visitorを使った静的解析
この記事はPowerShell Advent Calendar 2016の20日目です。
はじめに
前々回はASTの概要について述べ、最後にAST.FindAllメソッドを使って、ASTから指定のASTノードを検索する方法について説明しました。
前回はASTを再帰的に検索して、木構造を視覚化してみました。
今回もASTを検索する話なのですが、静的解析機能を実装するためのAST Visitorを用いる方法について説明します。が、あらかじめお断りしておきますが、静的解析の実装までは今回はたどり着きません。静的解析ツールをどう作るかorどう作られているか、ということを雰囲気で味わっていただければと。
Visitorパターン
AST Visitorの説明をする前に、まず、Visitorパターンについて簡単に。
Visitorパターン[Wikipedia]というのは、オブジェクト指向言語におけるデザインパターンの1つで、対象オブジェクトを巡回する「訪問者」クラスを定義するものです。Visitorクラスでは、対象クラスごとに行う処理を、個別にvisitメソッドをオーバーロードさせることで定義します。共通のVisitor抽象クラスを継承することで、異なる機能を持ったVisitorクラスを作ることができます。
一方、処理対象クラスには、Visitorオブジェクトを引数に受け取る、acceptメソッドを定義します。acceptメソッドでは、引数として受け取ったVisitorオブジェクトのvisitメソッドを呼ぶことで、処理を実行させます。
なお、処理対象クラスが子要素クラスを持つ場合には、acceptメソッド内で、子要素クラスのacceptメソッドを呼ぶようにします。こうしておくことで、Visitorは処理対象を再帰的に巡回できるようになります。
このように処理対象クラスから、実際に処理を行う機能をVisitorクラスとして分離することで、処理対象クラスに手を加えることなく、Visitorクラスを追加して、処理内容を増やしたりすることが可能になります。
AST Visitorの呼び出し
Visitorパターンを念頭において、AST Visitorの呼び出し方を見ていきましょう。Ast抽象クラスには、以下の2つのVisitメソッドが定義されています。
説明に入る前に注意点。メソッド名は"Visit"となっていますが、Visitorパターンでいうところの"accept"メソッドのことです。なぜメソッド名がAcceptじゃないのかは不明ですが…。
ともかく、AstクラスのVisitメソッドは、AstVisitor抽象クラスを継承したクラスのオブジェクトか、ICustomAstVisitorインターフェースを実装したクラスのいずれかを引数に取ることで、ASTに対する処理を実施します。
AstVisitor抽象クラスを継承、もしくはICustomAstVisitorインターフェースを実装することで、ASTの種類に応じた巡回処理を行うクラスを、自分で定義していきます。
AstVisitor抽象クラス
AstVisitor抽象クラスは、Visitorとしての基本的な機能があらかじめ実装されています。具体的には既に以下の機能は用意されています。
- ASTの種類に応じたVisitメソッドの定義
すべての種類のASTに対応するVisitメソッド(50個以上)がVirtualメソッドとして定義されています(※)。例えば、IfStatementAstに対する処理を行うための、VisitIfStatementメソッドがあります。※一般的なVisitorパターンでは、Visitメソッドを対象クラス分オーバーロードさせますが、PowerShellのAstVisitorは対象クラスに応じた別名のメソッドを定義する方式です。これも理由は分かりませんが、オーバーロードにするには多すぎるからかもしれません。
- 子ノードの再帰的な巡回
各Visitメソッドには、ASTの子ノードに対し、再帰的にVisitメソッドを呼ぶ仕掛けがあらかじめ備わっています。 - ノード巡回の停止
各VisitメソッドはAstVisitAction列挙型を返却します。以下のように返却する値によって、ノード巡回の継続、停止を制御できます。- Continue:ノード巡回を継続(デフォルト)
- SkipChildren:子ノードの巡回を行わない
- StopVisit:巡回を終了する
カスタムAstVisitorクラスを作成する
以上の基本的な機能を踏まえて、AstVisitor抽象クラスを実装したカスタムVisitorクラスを作ります。C#で書くのが一般的ですが、せっかくなのでPowerShell v5で追加された、クラス構文を使って書いてみましょう。
例えば、「利用しているコマンドのリストを取得する。ただし、コマンドのパラメータ内で別コマンドを呼び出している場合は除く。」というお題を解くことを考えます。
ASTのFindAllメソッドだと、配下に含まれるすべてのCommandAstを取得してしまうので、単純にはいきません。そこでカスタムAstVisitorクラスの出番です。
このお題を実現するVisitorクラスは以下のようになるでしょう。
using namespace System.Management.Automation.Language class GetCommandNamesVisitor : AstVisitor { [string[]]$CommandNames = @() [AstVisitAction]VisitCommand([CommandAst]$commandAst) { $this.CommandNames += $commandAst.CommandElements[0].Extent.Text return [AstVisitAction]::SkipChildren } }
PowerShellのクラス構文において、Virtualメソッドのオーバーライドは、単に同名のメソッドを定義するだけですので、ここではVisitCommandメソッドをオーバーライドします。
プロパティとフィールドの区別はないので、コマンド名の一覧を格納するCommandNamesプロパティは上記のような定義になります。メソッド内でクラスメンバを参照する際には$thisを用います。
作成したGetCommandNamesVisitorクラスをインスタンス化し、解析対象スクリプトブロックのASTのVisitメソッドに引数として渡します。
$scriptBlock = { $files = Get-ChildItem -Path (Get-Location | Split-Path -Parent) -File $files | Sort-Object -Property LastWriteTime -Descending | Select-Object -First 5 } $visitor = New-Object GetCommandNamesVisitor $scriptBlock.Ast.Visit($visitor) $visitor.CommandNames
実行すると、結果は
Get-ChildItem Sort-Object Select-Object
のようになるかと思います。
AstVisitorクラスの具体的な実装については、PSReadLineやPowerShellEditorServicesにありますので、参考にしてみてください。
ICustomAstVisitorの実装
前項で述べた、AstVisitor抽象クラスを継承したカスタムAstVisitorクラスの場合、基本的な処理を実装する必要はないですし、目的とするASTクラスに対するVisitメソッドだけオーバーライドすればいいので、非常に簡便です。
ただ、本格的にPowerShellの構文解析を行いたい場合、ノードの巡回順だとか、その他もろもろをもっと細かく自分で実装したいケースが出てきます。
そういった場合にはICustomAstVisitorインターフェースを実装したクラスを作って対応します。ICustomAstVisitorインターフェースも、AstVisitor抽象クラス同様、各ASTクラスに応じたVisitメソッドが定義されているのですが、各VisitメソッドはAstVisitAction列挙体ではなく、object型のオブジェクトを返します。つまり、自分で好きなオブジェクトを返すように定義できるわけです。
Ast.Visit(ICustomAstVisitor)はAstVisitor抽象クラスを引数に取る場合と異なり、objectを返却するのですが、このとき返却されるのは、最初に実行されたVisitメソッドの戻り値になります。
ICustomAstVisitorはインターフェースですので、処理はすべて自分で定義しなくてはなりません(※)。ノードの再帰的探索も、必要ならもちろん自前で実装する必要があります(前回紹介した、JSON化スクリプトのような処理になるかと思います)。
※ISEだとインターフェースの実装を一発で行うリファクタリング機能はないので、今回みたく実装すべきメンバがたくさんある場合は、こんな感じのひな形を作るスクリプトを使うと良いでしょう。
今回はICustomAstVisitorインターフェースを実装したクラスの実例まではご紹介できませんでしたが、興味のある方は、PSScriptAnalyzerで用いられているので参考にしてみてください。
まとめ
PowerShellのASTについてきちんと解説している記事が英語圏を含めてもあまりないようでしたので、3回に渡って、一通りの基礎知識をまとめてみました。
普通にPowerShellを使っている分には、滅多に使うことはないと思いますが、たとえばPSScriptAnalyzerのカスタムルールを自分で作る場合には、ASTの知識は必須になってきますので、必要に応じて参考にしていただければ幸いです。
2016/12/15
ASTをツリービューで表示する
この記事はPowerShell Advent Calendar 2016の15日目です。
前回はPowerShellのASTの概要を解説しました。今回は前回の補足というか応用的な内容になります。
前回、スクリプトブロックからどのようなASTが生成されるのか、図で書きました。そもそもあの図を作るにあたって、ASTの構造を視覚的に把握したかったので、そのためのスクリプトを書きました。
PowerShellで木構造を展開表示する方法は色々ある(※)かと思いますが、今回はJSONとして出力して、表示については他のアプリに任せることにしました。
※Format-Customのデフォルトビューは意外と使える
ただし、ASTオブジェクトをそのままConvertTo-Jsonコマンドレットに渡すわけにはいきません。というのも、AST構造を再帰的に展開するには、探索の深さ(-Depth)を大きくしなければいけませんが、そうするとASTではないオブジェクトも逐一展開してしまい、現実的な時間内で終わらなくなってしまいます。
そこで、ASTオブジェクトそのものをJSONにするのではなく、必要なプロパティのみ再帰的に取得したカスタムオブジェクトを生成し、それをJSONにする方針を取りました。その成果が以下のコードです。(using namespace節を使っているので、v5以上必須です。)
using namespace System.Management.Automation.Language function GetAstInner { param([Ast]$ast) end { $base = [ordered]@{ ExtentText = $ast.Extent.Text AstName = $ast.GetType().Name } $children = [ordered]@{} $leaves = [ordered]@{} $ast.psobject.Properties | ? Name -notin Extent, Parent | %{ $type = [type]($_.TypeNameOfValue) $propValue = $ast.($_.Name) if($type.IsSubclassOf([ast])) { if($null -ne $propValue) { $children[$_.name] = GetAstInner $propValue } } elseif($type.IsGenericType -and $null -ne ($type.GetGenericArguments() | where{$_.Name -eq "Tuple``2"})) { $asts = @() foreach($next in $propValue) { if($null -ne $next) { $asts += [pscustomobject]@{ Item1 = $( if($null -ne $next.Item1 -and $next.Item1 -is [ast]) { GetAstInner $next.Item1 } ) Item2 = $( if($null -ne $next.Item2 -and $next.Item2 -is [ast]) { GetAstInner $next.Item2 } ) } } } if($asts.length -ne 0) { $children[$_.Name] = $asts } } elseif($type.IsGenericType -and $null -ne ($type.GetGenericArguments() | where{$_.IsSubclassOf([ast])}) ) { $asts = @() foreach($next in $propValue) { if($null -ne $next) { $asts += GetAstInner $next } } if($asts.length -ne 0) { $children[$_.Name] = $asts } } else { if($null -ne $propValue) { $leaves[$_.Name] += $propValue.Tostring() } } } [pscustomobject]($base + $leaves + $children) } } function Get-Ast { param([scriptblock]$ScriptBlock) end { GetAstInner $ScriptBlock.Ast } }
本来なら、50種以上あるAstクラスに応じてきちんと場合分けすべきなのですが、コードが長くなるだけなので、動的言語の強みを生かしてダックタイピング的な方法で下位ノードを再帰的に展開しています。
途中、IfStatementAstのClausesプロパティなどで用いられている、ReadOnlyCollection<Tuple<Ast, Ast>>型であることを確認するのに苦労してますが、多分もっといい方法があると思います…。他はAstオブジェクトそのものか、ReadOnlyCollection<Ast>を返すだけなのでそんなに苦労はないです。Ast抽象クラスに含まれているExtent、Parentプロパティ以外で、Astを要素に含まないプロパティに関しては、ASTの葉として解釈しています。
次にこのスクリプトを使って、スクリプトブロックをJSONとして出力します。
$scriptBlock = { param([int]$x,[int]$y) end { $out = $x + $y $out | Write-Host -ForegroundColor Red } } Get-Ast $scriptBlock | ConvertTo-Json -Depth 100 | Set-Content ast.json
サンプルとして用いるスクリプトブロックは、前回のものと同じです。これを先ほど書いたGet-Ast関数に渡して、結果をConvertTo-JsonでJSON化しています。この際、探索の深さを100としていますが、ネストが深いスクリプトブロックなどでは、もっと大きくする必要も出てくるかもしれません。
出力されたast.jsonを、JSON Viewerを使って表示してみたのが、以下のスクリーンショットになります。
色んなスクリプトのASTを表示して、楽しんでみてください。
ASTシリーズはもう少し続きます。次回はAST Visitorと静的解析のお話です。
2016/12/12
PowerShellのAST入門
この記事はPowerShell Advent Calendar 2016の11日目です。遅刻してごめんなさい!
ASTとは
ASTとはAbstract Syntax Treeの略で、日本語では「抽象構文木」といいます。コードをパーサーが構文解析した結果から、言語の意味に関係のない要素(空白等)を除外し、木構造として構築したものです。
PowerShellでは3.0からASTの仕組みが取り入れられました。スクリプト実行時にはまずパーサーがスクリプトブロックからASTを生成し、コンパイラによってASTが解釈され、実行されるようになっています。
ASTを直接的に扱うのはコンパイラですが、実はPowerShellではパーサーが構築したASTを、PowerShellスクリプトから扱うことができます。
ASTの具体的な使い道としては、構文の静的解析が挙げられますが、その話は後でするとして、今回はまず、ASTの構成要素と構造を見ていきます。
ASTの構成要素
具体的には、{スクリプトブロック}.Astとして、ScriptblockオブジェクトのAstプロパティから、ScriptBlockAstオブジェクトにアクセスできます。このオブジェクトがASTのルートとなるノード(分岐点)を表します。このScriptBlockAstから、スクリプトブロック内部の構文要素が木構造として展開されていきます。
式(Expression)、文(Statement)といった構文要素は、各々対応したAstクラスが対応し、木構造における分岐点を形成します。また、分岐点の末端の葉では、当該の構文要素を構成するデータを示すオブジェクトが格納されます。
すべてのAstクラスは、Ast抽象クラス(System.Management.Automation.Language.Ast)を継承したクラスです。PowerShellでは50個程のAstクラスが存在します。各Astクラスは、抽象クラスで定義されている以下の2つのプロパティを持っています。
- Parent
親ノードを示すAstオブジェクトを返す - Extent
当該のASTノードに含まれるコード文字列や、スクリプト全体から見たコード文字列の位置等の情報を持つ、IScriptExtentインターフェースを実装したクラスのオブジェクトを返す
また各Astクラスは、対象の構文要素に応じて、それぞれ異なったプロパティを持ちます。たとえばScriptBlockAstは以下のプロパティを持ちます。
子の分岐点を返すもの
- UsingStatements
Using節を表す、UsingStatementAstのコレクションを返す - Attributes
スクリプトブロックに付与された属性を表す、AttributeAstのコレクションを返す - ParamBlock
paramブロックを表す、ParamBlockAstを返す - BeginBlock、ProcessBlock、EndBlock、DynamicParamBlock
各々、beginブロック、processブロック、endブロック、DynamicParamブロックを示すNamedBlockAstを返す
葉を返すもの
- ScriptRequirements
#Requires節の内容を表す、ScriptRequirementsを返す
ASTの構造
たとえば、
$scriptBlock = { param([int]$x,[int]$y) end { $out = $x + $y $out | Write-Host -ForegroundColor Red } }
という、二つの整数値の和を赤字で表示するというスクリプトブロックならば、以下のようなASTが構築されます。(一部分岐点、葉は省略しています。また、分岐点のASTクラス名は、末尾の"Ast"を省略表記しています。)
このスクリプトブロックのASTから、例えば「Red」というパラメータ値を表す、StringConstantExpressionAstまで辿るには、
$scriptBlock.Ast.EndBlock.Statements[1].PipelineElements[1].CommandElements[2]
StringConstantType : BareWord Value : Red StaticType : System.String Extent : Red Parent : Write-Host -ForegroundColor Red
のようにします。
基本的なASTの構造が頭に入っていれば、タブ補完を併用することで比較的簡単に目的のノードまで辿れますが、ASTノードの子に対し、ノード検索をかける方法もあります。
例えば、すべてのVariableExpressionAstを列挙するには、
$scriptBlock.Ast.FindAll({ param($ast) $ast -is [System.Management.Automation.Language.VariableExpressionAst] }, $true)
のように、FindAllメソッドを用います。
AST編はあと何回か続く予定です。
2016/01/03
パイプラインの処理を途中で打ち切る方法
PowerShellのパイプライン処理
まず、PowerShellのパイプライン処理について軽くおさらいします。
例えば、@、A、Bをそれぞれ何らかのコマンドとしたとき、
@|A|B
というパイプラインがあったら、処理の流れは、
@begin→Abegin→Bbegin→(@process→Aprocess→Bprocess→)×n→@end→Aend→Bend
の順に実行されます。(processブロックで「1入力に対し1出力する」場合以外は必ずしもこうならないですが)
さて、AかBのprocessブロック実行中に、何らかの条件を満たした時、パイプラインのprocessの後続処理を打ち切りたい場合はどうすれば良いでしょうか。
まずはbreakを使った駄目な例
ネットでよく見かける以下のようなコード、すなわち「パイプラインはbreakで処理を打ち切ることができる」というのは実は正しくないのです。
function Select-WhileTest { [CmdletBinding()] param ( [parameter(ValueFromPipeline=$true)] [psobject[]]$InputObject, [parameter(Position=0)] [scriptblock]$Predicate ) process { if(!(&$Predicate)) { break } $InputObject } }
このコードはv2までではそもそも正しく動作しませんが、v3以降では条件によっては正しく動作しているように見えるのが、誤解の元なのかと思います。(というか私も誤解してました。)
例えば、
$result = "初期値" $result = &{end{foreach($i in (1..5)){$i}}} | Select-WhileTest {$_ -lt 3} Write-Host "`$resultは $result です。"
のようにすると、
$resultは 1 2 です。
のように、想定した通りの結果が得られます。このように、上流のスクリプトブロックのendブロック内にforeachなどループブロックが存在し、そのループブロック内で下流に値を出力している場合はうまくいきます。(ちなみに、スクリプトブロック直下に記述するのとendブロック内に記述するのは等価。)
しかし、上流にループブロックがない場合、例えば
$result = "初期値" $result = 1..5 | Select-WhileTest {$_ -lt 3} Write-Host "`$resultは $result です。"
とすると、コンソールに1と2が改行区切りで表示されますが、ホストに表示されるだけで$resultには値は格納されません。そしてスクリプト化して実行した場合は、Write-Hostが実行されることすらなく、スクリプトが終了してしまいます。
breakだとなぜうまくいかないのか
結局どういうことかというと、パイプライン下流のbreakは、パイプラインを打ち切る処理をするのではなく、単に一つ上流のブロックをbreakする処理に過ぎないのです。
パイプライン上流にループブロックがある場合は、そのループブロックをbreakしますが、それ以外の場合はスクリプトのbegin, process, endのいずれかのブロックがbreakされてしまい、結果としてスクリプトが終了してしまうわけですね。
そして、このSelect-WhileTest関数だと大丈夫ですが、processブロックの中にループブロックを記述し、その中でbreakを書くのは当然ダメです。単にそのループを抜けるだけなので、上流の出力は止まってくれません。
breakではなくcontinueを使う場合も基本は同じ結果です。しかもcontinueは所詮、その名の通り継続処理なので、上流に以下のような無限リストがあると無限ループに陥ってしまいます。
&{begin{$i = 0} process{while($true){$i++; $i}}}|Select-WhileTest {$_ -lt 3}
breakの代わりに、
throw (New-Object System.Management.Automation.PipelineStoppedException)
を実行する方法も見かけますが、これはループブロックがあっても強制的にスクリプトが終了するので余計ダメです。try...catchでエラートラップすればスクリプトの終了は回避できますが、「パイプラインが正常終了せずエラーを出した」扱いであることには代わりないので、やはり出力を変数に格納することができません。
ダミーループを用いる、取りあえずの解決策
前述のbreakを使った方法の問題点のうち、上流にループブロックがないとスクリプトが終了してしまい、出力を変数に代入することもできない問題は、とりあえず解決する方法があります。
以下のように、呼び出す時にパイプライン全体をダミーのループブロックでラップすれば良いのです。
$result = "初期値" $result = do{ 1..5 | Select-WhileTest {$_ -lt 3} }until($true) Write-Host "`$resultは $result です。"
このようにしておけば、breakはパイプラインの外側のdo...untilを抜ける効果になるので、スクリプトが終了する心配も、値を出力しない問題も起こりません。
元々、パイプライン上流にループブロックが存在する場合でも、単にdoループ内の処理が1回走るだけなので、特に問題は起きません。1回だけ処理を実行するダミーループなら、for($i=0; $i -lt 1; $i++){}とかでも良いです。
ただ…この記述を美しいと思う人は多分いないですね。事情を知らないと意味不明ですし。そして、breakを記述する側の関数には、前述の通りのループブロック内では値を出力できないという制限は残ったままになります。
やはりbreakでパイプラインを打ち切るのは、本来想定された動作かと言われるとかなり微妙なところだと思います。(v3で一応動くようになったとはいえ)
この方法についての参考記事:Cancelling a Pipeline - Dreaming in PowerShell - PowerShell.com ? PowerShell Scripts, Tips, Forums, and Resources (ただしv2準拠の内容であることに注意)
ところで、Select-Object -Firstは…
さて、話は変わって、PowerShell 3.0からはSelect-Object -First の処理が変わったことについては、ご存知の方も多いかと思います。
具体的には、v2までは単にパイプライン処理をすべて終了してから、最初のn件を抽出する処理であったn件のパイプライン出力がされた後は、入力をすべてフィルタし出力に流さなくなる動作であったところが、v3からはn件のパイプライン出力がされた時点で、パイプラインの処理を打ち切るようになりました。(1/5修正)
つまり、
$result = 1..5| &{process{Write-Host "Process:$_"; $_}}| Select-Object -First 2 Write-Host "`$resultは $result です。"
というスクリプトは、v2までは
Process:1 Process:2 Process:3 Process:4 Process:5 $resultは 1 2 です。
のようにパイプライン出力は指示通り2件であるものの、上流の処理は結局、全部実行されてしまっています。
一方v3以降では、
Process:1 Process:2 $resultは 1 2 です。
のように、きちんと上流の処理を打ち切ってくれています。
つまり、ここまで述べてきたパイプライン処理の打ち切りは、実はv3以降のSelect-Object -Firstでは実現できているということです。これと同じことを我々も自作関数の中でやりたいわけです。
ではSelect-Object -Firstは具体的にどういう処理をしているかというと、StopUpstreamCommandsExceptionという例外をthrowすることでパイプライン処理の打ち切りを実現しています。この例外はまさに名前の通り、パイプライン上流の処理を中止するための例外です。この例外を自作関数でthrowしてやればうまくいきそうです。
しかし、この例外は非publicな例外クラスであることから、New-Objectコマンドレットなどでインスタンス化することはできません。リフレクションを駆使する必要がでてきます。
参考:PowerShell 3.0からはじめるTakeWhile - めらんこーど地階
(1/5追記)参考2:パイプラインの処理を途中で打ち切る方法のPowerShell版 - tech.guitarrapc.cóm(Add-TypeでC#経由でリフレクションしてます。)
頑張ればできなくはないですが、もっと楽な方法はないものか…と思ってあきらめかけたところ、いい方法を思いついたので紹介します。
Select-Object -Firstを利用する方法
Select-Object -Firstでできることが我々には(簡単には)できない。ならばどうするか。Select-Object -Firstを使えばいいじゃない。という発想です。
function Select-While { [CmdletBinding()] param ( [parameter(ValueFromPipeline=$true)] [psobject[]]$InputObject, [parameter(Position=0)] [scriptblock]$Predicate ) begin { $steppablePipeline = {Select-Object -First 1}.GetSteppablePipeline() $steppablePipeline.Begin($true) } process { if(!(&$Predicate)) { $steppablePipeline.Process($InputObject) } $InputObject } end { $steppablePipeline.End() } }
scriptblockにはGetSteppablePipelineというメソッドが存在し、このメソッドによりSteppablePipelineオブジェクトが取得できます。これは何かというと、要は「スクリプトブロック内のbegin, process, endを個別に実行する」ための機能です。
参考:PowerShell: ◆パイプライン入力・パラメータ入力対応のGridView出力関数を作る(私自身も以前この記事で知りました。)
{Select-Object -First 1}というスクリプトブロックは、1回目に実行するprocessブロック内でStopUpstreamCommandsExceptionを出してくれます。
よって、自作関数のprocessブロック内のパイプライン処理を打ち切りたい箇所で、SteppablePipelineオブジェクトのProcessメソッドを使うことで、{Select-Object -First 1}のprocessブロックの処理を呼び出してやればいいわけです。
このようにして作成したSelect-While関数を以下のように実行してみると、
# 上流にループあり $result1 = &{end{foreach($i in (1..5)){$i}}} | Select-WhileTest {$_ -lt 2} Write-Host "`$result1は $result1 です。" # 上流にループなし $result2 = 1..5 | Select-While {$_ -lt 3} Write-Host "`$result2は $result2 です。" # 上流に無限リスト $result3 = &{begin{$i = 0} process{while($true){$i++; $i}}} | Select-While {$_ -lt 4} Write-Host "`$result3は $result3 です。"
結果は
$result1は 1 です。 $result2は 1 2 です。 $result3は 1 2 3 です。
となり、少なくとも今まで述べてきた諸問題はすべて解消していることが分かると思います。
このSelect-While関数は、スクリプトブロックで指定した条件を満たさなくなったときに、パイプライン処理を打ち切ってくれるものですが、この「Steppable Select -First 方式」を使えば他の自作関数でも、割と気楽に呼べるんじゃないかなと思います。ループブロック内で呼び出すことももちろん可能です。
ただし問題点はある
これはSelect-Object -FirstというかStopUpstreamCommandsExceptionあるいはPowerShellのパイプライン機構の仕様に由来する問題であると思われるので、どうにもならないことではあるんですが、一点だけ注意事項があります。
$result = 1..5| &{ begin { Write-Host "Begin" } process { Write-Host "Process:$_" $_ } end { Write-Host "End" } }| Select-While {$_ -lt 2} Write-Host "`$resultは $result です。"
これの結果は
Begin Process:1 Process:2 $resultは 1 です。
となり、なんとendブロックが実行されていません。Select-While {$_ -lt 2} の代わりに Select-Object -Firstを使っても、同様にendは実行されません。
つまり、StopUpstreamCommandsExceptionというのはパイプライン処理を打ち切って、そこまでの出力値を正しくパイプライン出力として出してくれますが、やってくれるのはそこまでで、最後のendブロック処理はしてくれません。
これは十分注意が必要な点で、自作関数内でbeginブロックで確保したリソースをprocessブロックで利用して、endブロックで解放する…という、いかにも書いてしまいそうなパターンは、実はNGなんですね。何も上のようにマニアックなことをしなくても、単に下流でSelect-Object -Firstを使うだけでアウトです。
じゃあ、リソースの取り回しはどうするのが良いの、って話もありますが、それはまたの機会にしましょう。
(1/5追記)あえとすさんの記事が参考になります。:パイプライン処理の後始末をしよう - 鷲ノ巣 ただ、この方法ではパイプライン下流でthrowされた場合はトラップできないぽいですね。コマンドレットクラスの場合はIDisposable実装で良さそうです。
ここからは私見ですが、StopUpstreamCommandsExceptionが後付けかつ非パブリックなところとか、パイプラインを合法的に脱出するステートメントが今に至るまで用意されていないところとか、パイプラインを何とかして途中で打ち切っても、endは実行されないところとかを見ていると、そもそもPowerShellではパイプライン処理の中断というのは、あまり想定してない操作なのかなぁ、という気がしてきています。
上記のような裏技を使って回避するのも一案ではあるとは思いますが、そもそも「パイプライン処理の中断はイレギュラー」と考えて、そういう処理は避けて、必要に応じて別のアプローチを取ることも考えた方がいいのかもしれません。
2015/09/07
本当は怖いPowerShell その2 コマンド名の"Get-"補完
Twitterでこんな問題を出してみました。
PowerShell検定中級編。以下を実行するとそれぞれ何が起こるか。 @ &{} A &{process} B &{process{}} C &{process{process}} D &{process{process{}}}
? 牟田口大介 (@mutaguchi) September 7, 2015
以下、解答になります。
@ &{}
結果
何も出力されません。
解説
空のスクリプトブロック{}を実行演算子&で実行しています。空なので何も出力はありません。
A &{process}
結果
「'process' の後にステートメント ブロックがありません。」というパーサーのエラーになります。
解説
PowerShellのスクリプトブロックは、beginブロック、processブロック、endブロックを内包します。スクリプトブロック直下にparamブロック、DynamicParamブロック、beginブロック、processブロック、endブロック(他にもあったかも)以外のステートメントを記述すると、Endブロック内に記述されたものと暗黙的に解釈されます。
この場合、スクリプトブロック直下にprocess…と書き始めたので、パーサーはprocessブロックが開始されたと判断しますが、続くステートメントブロック{}(≠スクリプトブロック)の記述がないため、構文エラーとなります。
B &{process{}}
結果
何も出力されません。
解説
パーサーはAのように解釈しますが、今回はステートメントブロック{}がきちんと記述されているので、エラーなく解釈されます。
processブロックは、パイプライン入力がない場合でも1回実行されますが、この場合、中身は空なので、@と同様、何も出力はありません。
C &{process{process}}
結果
Get-Processコマンドレットが実行され、プロセス一覧が表示されます。
解説
・パーサーの挙動
Bまでの解説の通り、&{process{…}}とすると、…の部分が1回実行されます。今回はprocessブロック内に「process」と記述しているので、Aのようなパーサーエラーは発生せず、「process」がステートメントとして実行されます。
さて、PowerShellのステートメント(文)には「For」とか「If」とかと並列して、「パイプライン」が存在します。「パイプライン」には1つの「式」もしくは複数の「コマンド」が含まれます。
たとえば、「Get-ChildItem | Select-Object Name」というパイプラインには「Get-ChildItem」と「Select-Object Name」という2つのコマンドが含まれます。
(ちなみに、「式」とは「$x+1」とかの、値を返すもののことです。PowerShellではパイプラインの最初の要素にのみ、「コマンド」ではなく「式」を記述することができます。)
今回のお題では、「process」はprocessブロック下に記述されており、ForやIf等のステートメントではないのでパイプラインとして扱われます。このパイプラインには1つの要素のみ含まれていますが、式ではないので、コマンドとして解釈されます。
・コマンド探索の挙動
PowerShellの「コマンド」は、関数、コマンドレット、ワークフロー、Configuration、ファイル(実行ファイル、スクリプトファイルを含む)、&演算子で実行するスクリプトブロック等が挙げられます。
コマンドの探索は、まずコマンドへのエイリアスを探します。ない場合は、関数名orコマンドレット名を探します。それでもない場合は、実行ファイルやスクリプトファイルの拡張子(.exe、.ps1等)を付与してパスの通ったディレクトリを探します(ちなみにカレントディレクトリにあったとしても、相対パスor絶対パス表記でない場合は実行しません)。
さて、ここからが「本当は怖い」ところなんですが、ここまで探索してコマンドがなかった場合、与えられたコマンド名に"Get-"を付与してもう一度探索します。
今回のお題では、processという名前のコマンドを探して、もしパスが通ったフォルダにprocess.exeとかがあればそれが実行されますが、ない場合はGet-Processというコマンド名を探します。
もちろん、Get-Processというコマンドレットは標準で存在するので、それが実行されてしまう、というわけでした。
(ちなみにPowerShell 3.0以降なら、Get-付与で見つからない場合、さらにCmdlet Auto Discoveryにより未ロードのモジュールを探します。)
コマンド探索の詳細な挙動は、Trace-Command -Expression {コマンド} -Name CommandDiscovery -PSHost とすると調べられるので、見てみるのもいいかもしれません。
D &{process{process{}}}
結果
「Get-Process : パラメーター 'Name' を評価できません。その引数がスクリプト ブロックとして指定され、入力が存在しないためです。スクリプト ブロックは、入力を使用せずに評価できません。」というParameterBindingExceptionが発生します。
解説
・パーサーの挙動
Get-Processが実行され(ようとす)る理由についてはCまでの理解でOKでしょう。
さて、Get-Processコマンドレットには-Nameという、プロセス名を指定する位置パラメータが存在します。位置パラメータは、パラメータ名を指定せずパラメータ値のみを指定しても、指定順にパラメータにバインドしてくれる機能を持ちます。
たとえば、Get-Process powershell とすると、「Get-Process -Name powershell」が実行されます。
今回のお題「process{}」は、パーサーによってまず、コマンド名「process」と、パラメータ値「{}」(空のスクリプトブロック)に分割されます。
(ちなみにコマンド名に「{}」を含めることができないわけではなく、そういうコマンドを実行したい場合は、`でエスケープするか、&"command{}name"のように&演算子を用いれば可能です。)
今回の場合、パラメータ名の指定はありませんが、位置パラメータ-Nameに空のスクリプトブロックがバインドされることになるわけです。
・コマンドパラメータバインドの挙動
さて、-Nameパラメータの型は、System.String[]であり、scriptblockではありません。もちろんscriptblockからSystem.String[]への暗黙の型変換はありません。でもエラーメッセージ的には、スクリプトブロックを与えたこと自体は咎めていないように思えますね。
実はこれ、スクリプトブロックパラメータと呼ばれてる機能です。詳しくはスクリプトブロックパラメータのススメを見ていただくとして、要はコマンドへのパイプライン入力を、指定のスクリプトブロックで処理し、その出力結果をパラメータ値としてバインドする機能ですね。
今回エラーになった理由は、スクリプトブロックパラメータとして解釈しようとしたが、そもそも入力がなかったから、ということになります。
あまり意味はないですが、以下のように入力を与えてやれば、スクリプトブロックパラメータとして動作します。
"powershell" | Get-Process -Name {$_}
この場合パイプライン入力が追加されるので、-Nameパラメータの指定位置がずれることになるので、パラメータ名が必要になります。また、スクリプトブロックが空だと、「パラメーター 'Name' を評価できません。その引数の入力によって出力が作成されなかったためです。」というエラーをご丁寧に出してくれます。Trace-CommandでParameterBindingソースをトレースしてみるのも一興でしょう。
ちなみにあまり関係ない余談ですが、-NameパラメータにはValueFromPipelineByPropertyName属性が付いているので、実は以下のような指定もできます。
[PSCustomObject]@{Name="PowerShell"} | Get-Process
まとめ
PowerShellパーサーと飲むとき、話の肴にどうですかね。
See also: 本当は怖いPowerShell その1
2015/08/10
PowerShellでもnameof演算子みたいなことがしたい?
C#6.0のnameof演算子(じんぐるさんによる解説、岩永さんによる解説)が羨ましかったので、PowerShellでも似たようなことができるようにしてみました。
function nameof { param([scriptblock]$s) $element=@($s.Ast.EndBlock.Statements.PipelineElements)[0] if($element -is [System.Management.Automation.Language.CommandExpressionAst]) { switch($element.Expression) { {$_ -is [System.Management.Automation.Language.TypeExpressionAst]} {$_.TypeName.Name} {$_ -is [System.Management.Automation.Language.MemberExpressionAst]} {$_.Member.Value} {$_ -is [System.Management.Automation.Language.VariableExpressionAst]} {$_.VariablePath.UserPath} } } elseif($element -is [System.Management.Automation.Language.CommandAst]) { $element.CommandElements[0].Value } } nameof{$PSHOME} # 変数名 : PSHOME nameof{$PSHOME.Length} # プロパティ名 : Length nameof{[System.Diagnostics.Process]} # クラス名 : System.Diagnostics.Process nameof{[string]::Empty} # フィールド名 : Empty nameof{[DayOfWeek]::Friday} # 列挙体メンバー名 : Friday nameof{Get-Command} # コマンド名 : Get-Command
原理的には、変数やプロパティ等をスクリプトブロックに格納し、生成されるAST(抽象構文木、abstract syntax tree)を解析して、含まれる変数名やプロパティ名を抽出しています。(なので、PowerShell 3.0以上でないと動作しないと思います)
そもそも、どういうシチュエーションで使うの?という話ですが、実はあえとすさんのPowerShell コマンドを C# で書くときに便利な拡張メソッド - 鷲ノ巣という記事を見て、じゃあPSでコマンド(高度な関数)を書く時にも同じことが出来るといいかな?と思ったのがきっかけです。
function Get-Test { [CmdletBinding()] param([int]$Number) if($PSBoundParameters.ContainsKey((nameof{$Number}))) { "-$(nameof{$Number})パラメータが指定された" } }
こういう風に、"Number"という文字列をコード中に書かずに、-Numberパラメータ指定の有無を確認できるようになる、というわけです。
(この例の場合だと、Get-Test -Number 12 のようにすると、if文の中身が実行されます。)
ただ作ってはみたものの、使う意味がどれほどあるのか疑問に思えてきました。一応、ISEでは変数名やメンバ名に入力補完が効くので、実際の変数名を文字列で手打ちしなくて済むというメリットはなきにしもあらず、ですか。
しかし所詮は動的言語なので、存在しない変数名やメンバ名を入れても実行前にエラーは出ないですからね。(Set-StrictModeによるストリクトモードは編集時ではなくあくまで実行時(正確には変数やメンバを参照した瞬間)にエラーを出すためのもの)
それとISEのリファクタリング機能は弱い(というか無い)ので、リファクタリングに追従できるという本家nameof演算子に存在するメリットは、現状のところISEを使っている限りは享受できません。
PowerShell 5.0からの新要素、Script Analyzerによる静的解析を組み合わせればあるいは意味が出てくるのかもしれないですが、まだ確認できてないです。
というわけで、書いてはみたもののなんか微妙ですが、せっかくなんで公開しときます。
2013/12/05
プロパティ値が変化するまで待機する関数 Wait-State を書いてみた
はじめに
この記事はPowerShell Advent Calendar 2013の5日目の記事です。
突然ですが、PowerShellにはJobが完了するまで待機するWait-Jobコマンドレットというのがあります。これはその名の通り、パイプラインから入力したJobオブジェクトがすべて(あるいはどれか一つが)完了状態になるまでスクリプトの実行を待機する効果があります。
当然ながらWait-JobはJobオブジェクトにしか利用できませんが、任意の入力オブジェクトに対して待機条件を指定してやれば、その条件を満たすまで実行を停止するコマンドがあると便利なんじゃないかな?と常々思っていたので書いてみました。
Wait-State関数
function Wait-State { [CmdletBinding(DefaultParameterSetName="ByProperty")] param( [Parameter(ValueFromPipeline=$true)] [PSObject]$InputObject, [Parameter(Position=1,Mandatory=$true,ParameterSetName="ByProperty")] [string]$Property, [Parameter(Position=2,ParameterSetName="ByProperty")] [object]$Value, [Parameter(Position=1,Mandatory=$true,ParameterSetName="ScriptBlock")] [Alias("Script")] [ScriptBlock]$FilterScript, [Parameter()] [switch] $Any, [Parameter()] [switch] $IgnoreImmutable, [Parameter()] [switch] $PassThru, [Parameter()] [switch] $AllOutput, [Parameter()] [int] $IntervalSec=1, [Parameter()] [int] $TimeoutSec=60 ) begin { $objects = @() $watch = New-Object System.Diagnostics.StopWatch $watch.Start() $firstChecked = $false } process { foreach($o in $InputObject) { $objects += $o } } end { while($true) { $remains = @() foreach($o in $objects) { if($firstChecked) { if($o.Refresh) { $o.Refresh() } } if($null -ne $FilterScript) { if($o|&{process{&$FilterScript}}) { if($PassThru) { if((!$IgnoreImmutable -or ($IgnoreImmutable -and $firstChecked))) { $o } } } else { $remains += $o } } else { if($Value -eq $o.$Property -and (!$IgnoreImmutable -or ($IgnoreImmutable -and $firstChecked))) { if($PassThru) { if((!$IgnoreImmutable -or ($IgnoreImmutable -and $firstChecked))) { $o } } } else { $remains += $o } } } if($remains.Length -eq 0) { break } elseif($Any -and $remains.Length -lt $objects.Length) { if($AllOutput -and $PassThru) { $remains } break } elseif($watch.Elapsed.TotalSeconds -ge $TimeoutSec) { if($AllOutput -and $PassThru) { $remains } break } $objects = @($remains) $remains = @() $firstChecked = $true Start-Sleep -Seconds $IntervalSec } } }
コマンド構文
Wait-State [-Property] <string> [[-Value] <Object>] [-InputObject <psobject>] [-Any] [-IgnoreImmutable] [-PassThru] [-AllOutput] [-IntervalSec <int>] [-TimeoutSec <int>] [<CommonParameters>] Wait-State [-FilterScript] <scriptblock> [-InputObject <psobject>] [-Any] [-IgnoreImmutable] [-PassThru] [-AllOutput] [-IntervalSec <int>] [-TimeoutSec <int>] [<CommonParameters>]
パラメータ
-InputObject:入力オブジェクト。パイプライン入力可。
-Property:変更を確認するプロパティ名。
-Value:-Propertyで指定のプロパティ値が、このパラメータに指定する値になるまで待機する。
-FilterScript:プロパティを指定する代わりに待機条件をスクリプトブロックで指定する。
-Any:入力のどれか一つが条件を満たすまで待機するようにする。(省略時は入力が全部条件を満たすまで待機)
-PassThru:入力オブジェクトが待機条件を満たした時点で、そのオブジェクトを出力する。省略時は出力なし。
-IgnoreImmutable:最初から条件を満たしている場合は出力しない。-PassThruと併用。
-AllOutput:タイムアウトした場合や-Any指定時に一部のオブジェクトしか出力していない場合でも、最終的に未出力のすべてのオブジェクトを出力してから終了する。-PassThruと併用。
-IntervalSec:プロパティ値のチェック、もしくは待機条件スクリプトの実行の間隔秒数を指定。デフォルト1秒。
-TimeoutSec:最大待機秒数。デフォルト60秒。この時間を過ぎると条件を満たしていなくても待機を終了する。
使用例
# 停止しているサービスがすべて開始するまで待機する。 Get-Service |? Status -eq Stopped | Wait-State -Property Status -Value Running # 上記と同じだが、開始したサービスを逐次表示する。 Get-Service |? Status -eq Stopped | Wait-State -Property Status -Value Running -PassThru # 停止しているサービスが少なくとも1つ開始するまで待機する。 Get-Service |? Status -eq Stopped | Wait-State -Property Status -Value Running -Any # プロセスのワーキングセットが100MBを超えた段階で逐次表示する。 Get-Process | Wait-State {$_.WorkingSet -ge 100MB} -PassThru # 上記と同じだが、最初から100MBを超えてるものは出力しない。 Get-Process | Wait-State {$_.WorkingSet -ge 100MB} -PassThru -IgnoreImmutable # ディレクトリ内のファイル容量がすべて50KBを超えるまで待機し、出力のFileInfo配列を変数に代入。 $files = Get-ChildItem | Wait-State {$_.Length -ge 50KB} -PassThru -AllOutput -TimeoutSec 3600
問題点
プロパティ値を取得するときにリアルタイムに値が反映されないオブジェクト(要するにGetした時点のプロパティ値がずっと固定されてるもの)に対しては正しく動作しません。というか、PowerShellで扱うオブジェクトはほとんどそうなんじゃないかと思います(汗
ServiceControllerオブジェクト、Processオブジェクト、FileInfoオブジェクト、DirectoryInfoオブジェクトについては、Refreshメソッドを実行すると、プロパティ値を現在の値に更新してくれるので、それを利用してプロパティ値を監視できるようにはしています。
それ以外についても監視できるようにするには、たぶんそれぞれのオブジェクトに応じた監視方法を地道に調査して実装していくしかないんじゃないかなあと思います。
INotifyPropertyChangedインターフェースを実装したクラスについては、PropertyChangedイベントをSubscribeしてプロパティ値の変更を追跡できるようにしてみようとちょっと思ったんですが、PowerShellで扱うオブジェクトにINotifyPropertyChangedを実装したクラスのものってそんなにあるんだろうか?と疑問を覚えたのでやめました。
WMIオブジェクトについては何か共通の方法でプロパティ値変更を監視できないかなあと思ったんですが、結局IntervalSec間隔でクエリを発行する方法になってしまい、低コストで行う方法がちょっと思いつきませんでした。
ただ、-FilterScriptパラメータをサポートしているので、ここに書くことでいかようにも待機条件をカスタマイズできるので、極端な話、条件スクリプトブロックに{(Get-Hoge -Name $_.Name).Property -eq “ほげ”}みたいなコードを書いてゴリ押しすることもできるかと思います。
感想
というわけで、なんだか微妙な成果になって恐縮ですが、なんで無いんだろうと思っていた関数を実際に書いてみると、無い理由が分かったりするものなんだなあ、と思ったりした次第です。
スクリプトの解説を何もしてないですが、あえて解説する程のものでもないこともないですが、まあ長くなるのでやめときます。
ただ、入力オブジェクトを一旦全部取得してから、後続パイプラインに流し込む例としていくらか参考になるかもしれません。(beginで入れ物を用意して、processで詰めて、endでメインの処理を書くだけですけど)
あとはフィルタースクリプトブロックの実装方法の一例としても参考になるかも? スクリプトブロックを二重にして$_に対象オブジェクトがきちんと格納されるようにする方法、若干トリッキーな気もしますが正式にはどう書くのが良いのか不明なのでこうしてみました。
2012/12/25
独自型に書式を設定する [PS Advent Calendar '12]
本記事はPowerShell Advent Calendar 2012、最終日の記事です。
前回はAdd-Typeコマンドレットを使って独自のクラスを作成し、そのクラスを入力あるいは出力型に取る関数をどのように記述すれば良いのか、というお話でした。
今回は前回に残した課題である、ユーザー定義の独自型の出力にちゃんとした書式を設定する方法について説明していきます。
型データと書式設定データ
PowerShellは.NETオブジェクト(に限らず、型アダプタが存在するCOMやXMLなども、ですが…)をラッピングした型システムを有しているわけですが、このラッピング時にオブジェクトに対してPowerShell独自のデータを付与することができます。それが型データと書式設定データと呼ばれるものです。
型データはクラスにPowerShellエンジンが付加する独自のメンバ(プロパティ、メソッド)です。代表的なものにNoteProperty(静的な値をもつプロパティ), ScriptProperty(スクリプトで記述されたgetterとsetterをもつプロパティ), AliasProperty(既存プロパティのエイリアス), CodeProperty(.NETのスタティックプロパティ), CodeMethod(.NETのスタティックメソッド), ScriptMethod(スクリプトで記述されたメソッド)があります。
型データは .types.ps1xmlファイルにその定義を記述し、モジュールならモジュールマニフェスト(.psd1)のTypesToProcessプロパティに型データファイルパスを指定することで、インポート時に型データを反映させることができます。
Update-TypeDataコマンドレットで後から型データファイルを読み込んで反映することもできます。PowerShell 3.0ではUpdate-TypeDataコマンドレットで.types.ps1xmlファイルを読むのではなく、直接任意のメンバを任意の型に追加することも可能になっています。
また、
$obj | Get-Member -View Extended
とすることで$objに追加されたメンバがどれなのかが分かります。(ちなみに型アダプタによって追加されたメンバはAdapted指定で分かります)
今回の記事では型データについてはこれくらいにして(またいつか改めて取り上げたいですが)、以下、本題の書式設定データの話をしていきます。
書式設定データとは
書式設定データも型データと同様、クラスに付加するデータなのですが、これはオブジェクトを出力する際のデフォルトの表示フォーマットを定義するものとなります。
たとえばGet-Processコマンドレットを実行すると
Handles NPM(K) PM(K) WS(K) VM(M) CPU(s) Id ProcessName ------- ------ ----- ----- ----- ------ -- ----------- 138 13 18456 7104 62 2052 aaHMSvc 88 8 2168 1268 55 2112 AdminService ...
のようにProcessオブジェクトが表形式で表示されます。
ここで表に含まれるプロパティ、IdとProcessNameは.NETのProcessクラスが持つオリジナルのプロパティで、HandlesはHandleCountプロパティのAliasPropertyです。NPMやWSなども対応するAliasPropertyやScriptPropertyが定義されているのですが、たとえばNPMというAliasPropertyはあってもNPM(K)というメンバはありません。これを定義しているのが書式設定データになるわけです。そもそもこの表に含まれるプロパティの種類であるとか、もっというとProcessオブジェクトは特に指定がない場合は表形式で表示する、といった定義も書式設定データに含まれます。
書式設定データも型データと同様にXMLファイルに定義されるのですが、その拡張子は.format.ps1xmlです。モジュールならマニフェストのFormatsToProcessプロパティに.format.ps1xmlファイルのパスを指定することで表示に反映されますし、Update-FormatDataコマンドレットによって後から反映させることも可能です。
この書式設定ファイルはユーザー定義型に関しても定義を記述できます。つまり、ユーザー定義型に対応する.format.ps1xmlファイルを記述し、それを読み込むことで、自分がAdd-Typeで作った型に対しても書式を設定できるわけです。次の節でそのやり方を見ていきましょう。
書式設定データの作り方
書式設定データ.format.ps1xmlの書式についてはMSDNにリファレンスがあるので、これを読めば自分で一から作成することは可能です。ですがそれはちょっと面倒くさいので、既存の書式設定データをベースに、独自型用に修正していくのがお勧めです。
書式設定データはGet-FormatDataコマンドレットで取得でき、Export-FormatDataコマンドレットでファイルとして出力できます。なお、Export-FormatDataコマンドレットの出力XMLファイルは改行コードが入っていなくて見づらいので、XmlDocumentとして再度読み込んでSave()するという小細工を施すのがお勧めです。先ほどのProcessクラス(System.Diagnostics.Process)の書式設定データをファイル化するには以下のようなスクリプトを実行します。
$ps1xml="process.format.ps1xml" Get-FormatData System.Diagnostics.Process | Export-FormatData -Path $ps1xml -IncludeScriptBlock ([xml](Get-Content $ps1xml)).Save((Join-Path (Get-Location) $ps1xml))
このスクリプトを実行すると、Processクラスの書式設定データをprocess.format.ps1xmlファイルとして出力できます。
出力した.format.ps1xmlはPowerShell ISE(ただしv3の)で開くのがお勧めです。ちゃんとXMLノードを折りたたみできるので。
さて、出力した.format.ps1xmlファイルをつらつらと眺めると、実際の出力書式の定義はビュー(View)という単位で行われていることがわかります。View要素の下にはName要素(ビューの名前)、ViewSelectedBy要素(ビューを反映する対象の型)、TableControl要素(表の書式)があります。
TableControl要素の下にはTableHeaders要素とTableRowEntries要素が含まれており、前者は表のヘッダーに記載するラベルやその幅などをTableColumnHeader要素に一つ一つ定義し、後者は表の本体に表示するオブジェクトのプロパティ値をTableColumnItem要素に一つ一つ定義しています。
TableColumnItem要素は単純にプロパティ値を表示させるならPropertyName要素にプロパティ名を書くだけでOKです。スクリプトの結果を表示させるならScriptBlock要素内にスクリプトを書きます。ScriptBlock要素内で自動変数$_に1オブジェクトが格納されています。
結局のところ、表に表示したいプロパティの分だけ、TableColumnHeader要素(プロパティ名のラベル)とTableColumnItem要素(プロパティ値)を1:1で定義していけばOKです。
以上を踏まえてprocess.format.ps1xmlを改変して、前回作成したWinscript.Driveクラスの書式設定ファイルdrive.format.ps1xmlを作成してみました。
<?xml version="1.0" encoding="utf-8"?> <Configuration> <ViewDefinitions> <View> <Name>drive</Name> <ViewSelectedBy> <TypeName>Winscript.Drive</TypeName> </ViewSelectedBy> <TableControl> <TableHeaders> <TableColumnHeader> <Label>Name</Label> <Width>4</Width> </TableColumnHeader> <TableColumnHeader> <Label>VolumeName</Label> <Width>15</Width> </TableColumnHeader> <TableColumnHeader> <Label>Type</Label> <Width>15</Width> </TableColumnHeader> <TableColumnHeader> <Label>RootPath</Label> </TableColumnHeader> <TableColumnHeader> <Label>Size(GB)</Label> <Width>25</Width> <Alignment>Right</Alignment> </TableColumnHeader> <TableColumnHeader> <Label>Used(%)</Label> <Width>7</Width> <Alignment>Right</Alignment> </TableColumnHeader> </TableHeaders> <TableRowEntries> <TableRowEntry> <TableColumnItems> <TableColumnItem> <PropertyName>Name</PropertyName> </TableColumnItem> <TableColumnItem> <PropertyName>VolumeName</PropertyName> </TableColumnItem> <TableColumnItem> <PropertyName>Type</PropertyName> </TableColumnItem> <TableColumnItem> <PropertyName>RootPath</PropertyName> </TableColumnItem> <TableColumnItem> <ScriptBlock>[int]($_.Size/1GB)</ScriptBlock> <FormatString>{0:#,#}</FormatString> </TableColumnItem> <TableColumnItem> <ScriptBlock>[int]($_.UsedSpace*100/$_.Size)</ScriptBlock> </TableColumnItem> </TableColumnItems> </TableRowEntry> </TableRowEntries> </TableControl> </View> </ViewDefinitions> </Configuration>
前回作成したスクリプトを実行後、このdrive.format.ps1xmlファイルを
Update-FormatData -AppendPath .\drive.format.ps1xml
のようにして現在のセッションに読み込んでやることで、以降は定義した関数を実行すると、
PS> Get-Drive Name VolumeName Type RootPath Size(GB) Used(%) ---- ---------- ---- -------- -------- ------- C: LocalDisk C:\ 112 88 D: LocalDisk D:\ 466 63 Q: CompactDisc Q:\ V: NetworkDrive \\server\D 1,397 64
このように定義した型のオブジェクトに対しても、綺麗な書式で出力することができるようになるわけです。
まとめ
ここまで全三回にわたって、「関数の定義」「型の定義」「出力書式の定義」の基本のきについて説明してきました。基本とはいえ、PowerShellでがっつりとちゃんとした関数を書く上で真っ先に押さえておかないといけないことばかりですし、逆にここまで必要最小限に絞った記事もあまりないかなと思い、まとめてみました。参考にしていただければ幸いです。
さて、PSアドベントカレンダー2012もこれで終わりです。皆様、よいクリスマス…はもう終わりなので、よいお年を!
※終わりと言っておきながら実は明日以降、ロスタイムとしてもうひとかたご登場の予定です。ご期待ください。
2011/12/25
バックグラウンドジョブを使った並列処理 [PS Advent Calendar '11]
はじめに
PowerShell Advent Calendar 2011の25日目最終日の記事、そしてこれが私の記事では4回目となります。今回もバックグラウンドジョブについての話題です。今回はバックグラウンドジョブを使って並列処理をやってみようという試みです。
これまでの記事は以下になります。
13日目:バックグラウンドジョブとの通信
19日目:PowerShell 3.0で追加されるバックグラウンドジョブ関係の新機能
ところでつい2日前、WMF3 CTP2 Windows PowerShell Workflow.pdfというpdfファイルが公開されました。これは19日目に書いたPS workflowについての詳しい説明(英語)です。構文だけでなくPSスクリプトとの違いやWFとの関係などが詳しく書かれています。ぜひ目を通しておくことをお勧めします。23日目のAhfさんの記事と併せて読むと理解が深まると思いますよ!
並列処理スクリプト
C#をご存知の方なら、PowerShellのバックグラウンドジョブ機能はC#4.0から使えるTaskオブジェクトとちょっと似てるかなーと思われるかもしれません。ではC#4.0でコレクションに対して並列処理でループを回すParallel.For()やParallel.Invoke()みたいなことはPowerShellでできないのか、という疑問が出てくるかと思います。
前回述べたようにPowerShell 3.0ならworkflowを使えば並列処理が可能で、for -parallelステートメントやparallelブロックでParallel.For()やParallel.Invoke()みたいなことが可能になります。しかしPowerShell 3.0がリリースされるのはまだ先ですし制限事項も多いので、なんとかPowerShell 2.0で、しかもworkflowのような制限なしで、並列処理のスクリプトは書けないものかと考えてみました。
function ParallelForEach-Object { [CmdletBinding()] param( [Parameter(Mandatory=$true,Position=1)][scriptblock]$process, [scriptblock]$begin={}, [scriptblock]$end={}, [Parameter(ValueFromPipeline=$true)][psobject]$inputObject ) begin { &$begin $jobs=@() } process { $jobs|Receive-Job while(@($jobs|?{$_.State -eq "Running"}).Length -ge 5) { $jobs|Receive-Job start-sleep -Milliseconds 100 } $jobs += Start-Job $process -argumentList $inputObject } end { while(@($jobs |?{$_.State -eq "Running"}).Length -gt 0) { $jobs|Receive-Job start-sleep -Milliseconds 100 } $jobs|Receive-Job $jobs|remove-job &$end } } $watch=new-object System.Diagnostics.Stopwatch "ForEach-Object 開始" $watch.Start() 1..10|ForEach-Object { "start: " + $_ Start-Sleep -sec 5 "end: " + $_ } $watch.Stop() "ForEach-Objectの場合:" + $watch.Elapsed.TotalSeconds + " sec" $watch.Reset() "ParallelForEach-Object 開始" $watch.Start() 1..10|ParallelForEach-Object { "start: " + $args[0] Start-Sleep -sec 5 "end: " + $args[0] } $watch.Stop() "ParallelForEach-Objectの場合:" + $watch.Elapsed.TotalSeconds + " sec"
ParallelForEach-Object関数はパイプラインから渡されたコレクションの各要素について、並列にスクリプトブロックを実行させるものです。同等の処理をForEach-Objectを使って同期的に逐次処理した場合とかかる時間を比較しています。10個の要素があり、各要素につき5秒かかる処理なので、逐次的に処理すると当然50秒以上かかりますが、ParallelForEach-Object関数を使って並列処理させると環境にもよりますが20秒以内に完了します。
この関数では渡されたコレクション1要素に対し1つのジョブを割り当て、同時に5ジョブまで(呼び出し元を含めて同時稼働が6プロセスまで)を並列実行するようにしています。
ただこれはあくまでなんちゃって並列処理なので、並列化することで本当に処理が高速になるかどうかは環境次第かと思います。一応、うちのCore2Duo (2コアCPU)な環境だと、足し算を3万回ほどする処理を10回行う場合、逐次処理とこの関数を使った並列処理では54秒が39秒に短縮され、有意な実行時間差が出ました。
またジョブを開始するのに新しくプロセスを起動させるので、1ループあたりの実行時間がプロセス起動にかかる時間より短ければ、この関数による並列化で処理時間の短縮は見込めません。
処理の対象が複数のリモートPCである場合などは割と有効なのかなと思います。たとえば複数サーバーから別々のファイルを同時にダウンロードするときなど。
ここではParallel.For()やParallel.ForEach()相当の関数を書きましたが、Parallel.Invoke()のような関数も書けるかと思います。スクリプトブロックの配列をStart-Jobで順に走らせ、Wait-Job, Receive-Jobする感じですね。
あとここではやりませんでしたが、Start-Jobの代わりにInvoke-Commandを使い複数のリモートPCに処理を振り分ければ、なんちゃって分散処理もできるのかなあと思いました。
おわりに
実はこのスクリプトを書いたのはPS Workflowの調査前のことで、Workflowで同様のことが可能になることを知って少々愕然としたのですが、それなりに面白いスクリプトかと思ったので公開することにしました。ともあれ、これからのマルチコア、メニーコアの時代、非同期処理や並列処理はますます重要になるかと思います。管理スクリプトにおいてもこれらの概念を意識しないわけにはいかなくなるでしょう。全4回にわたってPowerShellのバックグラウンド機能を解説してきましたが、これらがあなたの非同期&並列スクリプトライフ(?)の一助になれば幸いです。
さてさて、これでPSアドベントカレンダー2011もおしまいです。楽しんでいただけたでしょうか? 私自身も自分で記事を書いていて楽しかったですし、他の方の記事を読むのも色々な発見があり、とても有意義な25日間でした。記事を書いて参加していただいた方々、そして読者の方々に厚く御礼申し上げます。これからもぜひ、PowerShellを活用し、楽しんでくださいませ。
それでは皆様、良いクリスマスをお過ごしください!
2011/12/19
PowerShell 3.0で追加されるバックグラウンドジョブ関係の新機能 [PS Advent Calendar '11]
はじめに
PowerShell Advent Calendar 2011の19日目の記事、そしてこれが私の記事では3回目となります。今回も前々回、前回からの引き続きでバックグラウンドジョブについての話題です。前回までは現行バージョンであるPowerShell 2.0におけるバックグラウンドジョブの機能の使い方を解説してきましたが、今回はPowerShellの次期バージョンである3.0に追加される予定の機能のうち、ジョブ関係のものをピックアップしてみます。現在PowerShell 3.0を含むWindows Management Framework(WMF)3.0のCTP2が公開されています。またWindows 8 Developer Preview / Windows Server 8 Developer PreviewにはWMF3.0 CTP1相当のPowerShell 3.0が含まれています。
注意:本記事で取り上げた内容は製品のプレビュー版をもとに記述しています。そのためリリース版では内容が一致しない可能性があることをご承知おきください。
using:ラベル
前回、ジョブに値を渡す方法について解説しましたが、-argumentListに引数として渡すというのは正直めんどうです。呼び出し元のグローバル変数を直接ジョブ側から参照したいですよね。そこでPowerShell v3では新たに変数に付けるusing:ラベルというのが追加されました。このラベルをジョブのスクリプトブロック内で使うと、呼び出し元の変数を参照することができます。具体例。
$test="PowerShell 3.0" Start-Job {$using:test}|Wait-Job|Receive-Job
とすると、「PowerShell 3.0」と表示され、たしかにジョブのスクリプトブロックから呼び出し元の変数を参照できていることがわかります。これは便利ですね。ただし残念ながらこの方法を使ってもスクリプトブロックをジョブに渡すことはできないようです。相変わらず文字列にキャストされてしまいました。
Receive-Jobコマンドレットの変更点
前々回に、Invoke-Command -asJobで複数リモートコンピュータに対してジョブを走らせた場合、そのジョブに対して$job|Receive-Jobがなぜか機能しない、と書きましたがこの問題が解決されています。そもそもなんでこの問題が発生していたのか、面白いのでちょっと解説します。
実はReceive-Jobコマンドレットの-locationパラメータに「パイプライン入力を許可する true (ByPropertyName)」フラグがついていたのが原因でした。複数コンピュータに対して実行したジョブは子ジョブを複数持ちますが、親ジョブ自体は配列ではありません。そしてそのLocationプロパティには子ジョブが実行されているコンピュータ名が"remote01,remote02,remote03"のようなカンマ区切りの文字列として格納されています。よってこのジョブオブジェクトをパイプラインを通じてReceive-Jobコマンドレットに渡すと、ValueFromPipelineByPropertyName属性が付いている-locationパラメータにジョブオブジェクトのLocationプロパティの値が渡されますが、その値はカンマ区切りの文字列なので正しく解釈されず、結果として期待の動作をしなかったわけです。
v3ではReceive-Job -locationのValueFromPipelineByPropertyName属性が取り除かれ、問題なく動作するようになりました。
他の変更点としてはReceive-Jobにジョブが完了するまで待つための-waitパラメータが追加されました。が、$job|Wait-Job|Receive-Jobと違いが分からないかも…。
Get-Jobコマンドレットの変更点
Get-Jobに-filterパラメータが追加されました。連想配列でジョブにフィルタをかけられるものです。
Get-Job -filter @{State="Completed";Location="localhost"}
where-objectを使わずともフィルタできるので便利、かも。しかし個人的には-filterパラメータはいろんなコマンドレットで定義されているものの、使い方がそれぞれ異なるのがとてもとてもイヤです。まず覚えられないのでヘルプを引くところから始まっちゃいますので。パフォーマンスの関係上、Where-Objectを使うよりコマンドレット内部でフィルタしたほうが速くなるというのはわかるのですが、もう少しフィルタ方式に統一性を持たせられなかったんだろうかとか思いますね。
Get-Jobにはほかに-afterと-beforeというパラメータが追加されています。これは後述するPSScheduledJobの完了時刻をDateTimeで範囲指定し、フィルタするものです。
PowerShell Workflow
PowerShell3.0というかWMF3.0のおそらく目玉機能の一つがPowerShell Workflowです。文字通り、PowerShellでワークフローが記述できるようになります。
Workflowは関数の一種なのですが、長時間を要するタスクやリモート実行や並列実行などで使うことを主目的としているようです。functionキーワードの代わりにworkflowキーワードでワークフローを定義すると、自動的に実行対象コンピュータ名や資格情報といったパラメータが複数定義されるので、これらのパラメータを特に定義なしで利用することができます。またworkflow内ではparallelブロックを定義でき、その中に記述された各行は並列に実行されます。またfor/foreachステートメントで-parallelパラメータが利用可能になり、繰り返し処理やコレクションの列挙を並列して行うことができるようになります。
自動定義されるパラメータに-asJobがあり、これを利用するとworkflowをジョブとして実行できます。このジョブは通常のジョブとは違い、新たに追加されたSuspend-JobコマンドレットとResume-Jobを使うことによって、ジョブの一時中断と再開ができます。このジョブの中断と再開は、リモートコンピュータ上でワークフローを走らせてるときでも可能ですし、中断後リモートセッションが切断されたあとに再開することもできますし、リモートコンピュータがシャットダウンしても再起動後にジョブを再開することまでできてしまいます。これらはWMFにおけるリモート基盤を支えているWinRMの最新バージョン、WinRM3.0が実現している機能です。このようにセッションを再接続してもタスクを継続できるような接続をrobust(堅牢な), resilient(弾力性のある、障害から容易に回復する) connectionと称しているようです。
PowerShell WorkflowはWindows Workflow Foundation(WF)と密接な関係があり、WFのデザイナで作ったxamlをPS Workflowに変換したり(逆もできる?)、Invoke-Expressionでxamlを実行したりできるらしいです。WF側でもPowerShellの多くの機能がアクティビティとして使用できたりして、WFとPowerShellがWMFというシステム管理フレームワークの主要なパーツとして密に連携していくようです。このあたりの話はWFの専門家であるAhfさんがPSアドベントカレンダーの23日目にしてくださる予定なので、楽しみですね!
なおPS Workflowは従来のPSスクリプトとは異なった利用状況を想定しているため、あるいはWFの機能と合わせるため、PSスクリプトではできるのにPS Workflowではできないことがとてもたくさんあります。forの中でbreakやcontinueステートメントが使えないとかStart-Sleepは-Secondパラメータしか指定できない(ミリ秒単位でスリープかけられない)とか色々あります。そのうちPS WorkflowとPSスクリプトの違いというドキュメントが公開されるんじゃないかと思います。
ちなみにWinRM3.0のおかげでワークフローではない通常のリモートジョブでも、New-PSSessionで作成したセッションの中でジョブを実行した場合、そのジョブが動作しているコンピュータへのセッションを切断(Disconnect-PSSession)したあと、セッションに再接続(Connect-PSSessionやReceive-PSSession)すればジョブの結果を取得したりすることができます。またセッションを作製したインスタンス(powershell.exe)でそのセッションを切断すると、それ以降は別のインスタンスやコンピュータからそのセッションにConnect-PSSessionで接続することができます。
ScheduledTasksモジュール
PowerShell3.0が含まれる次期Windowsでは大量のモジュールが追加され、それらのモジュールに含まれるコマンドレットの総数はWindows 8でも2000を超える膨大な量になります。これはWindows 8やWindows Server 8では従来のコマンドプロンプトから実行するコンソールexeコマンドのほとんどすべてをPowerShellコマンドレットに置き換える措置のためです。もちろん従来のコマンドは互換性のために残されますが、netsh.exeなど一部のコマンドではPowerShellへの移行を促すメッセージが表示されたりするようになるようです。参考:Window 8の機能の概要 − @IT
ScheduledTasksモジュールというタスクスケジューラを扱うモジュールもWindows 8 / Windows Server 8に新しく追加されるモジュールの一つで、schtasks.exeを置き換えるものとなります。これまでPowerShellでタスクスケジューラを扱うにはschtasks.exeを使うか、WMIのWin32_ScheduledJobを使う必要があり面倒でしたが、このモジュールに含まれるコマンドレットを用いるとそれが容易に行えるようになります。たとえば「notepad.exeを毎日朝10:00に起動する。バッテリ駆動のときでも実行」というタスクを「test」という名前で登録するには、
$action = New-ScheduledTaskAction -Execute "notepad.exe" $trigger = New-ScheduledTaskTrigger -At "10AM" -Daily $setting = New-ScheduledTaskSettings -AllowStartIfOnBatteries New-ScheduledTask -action $action -trigger $trigger -setting $setting|Register-ScheduledTask -TaskName test
とすれば可能であるはずです。実はServer 8 Developer Preview版ではこのコードは機能しません。タスクのトリガを作成するNew-ScheduledTaskTriggerコマンドレットが正しいオブジェクトを作ってくれないのです。これは将来のバージョンできっと修正されるかと思います。ただトリガを定義する部分をはずせば(あんまり意味はないですが)このコードは動作するので、やり方はたぶんあってると思います。
Register-ScheduledTaskコマンドレットには-asJobパラメータがあり、タスクスケジューラへの登録をジョブとしてバックグラウンドで行うことができます。ScheduledTasksモジュールはWMIを利用してタスクスケジューラを操作するので、ほかのWMI関係のコマンドレットと同様ですね。
なおScheduledTasksモジュールはデフォルトでは読み込まれていないので、使用するには本来Import-Moduleコマンドレットを使用しなければならないところですが、PowerShell3.0のCmdlet Discoveryという機能によりImport-Moduleは実行しなくてもScheduledTasksモジュールに含まれるコマンドレットを利用することができます。Cmdlet Discoveryとは現在読み込まれていて実行可能なコマンドレットの中にない、未知のコマンドレットを実行しようとしたとき、Modulesフォルダに存在するモジュールから同名のコマンドレットが定義されているものを探し出し、発見できたらそのモジュールを読み込んだうえでコマンドレットを実行するという優れた機能です。初回だけモジュールの検索とロードの手順が実行されるので待たされますが、一度Cmdlet Discoveryによってモジュールがシェルに読み込まれればあとは快適にコマンドレットを実行できるようになります。
PSScheduledJobモジュール
ScheduledTasksモジュールは-asJobパラメータが定義されているくらいで実はそれほどPowerShellのジョブとは関係ないのですが、ScheduledTasksモジュールが内包しているPSScheduledJobモジュールはPowerShellのジョブ機能と大いに関係があります。
従来PowerShellスクリプトをタスクスケジューラに登録するにはコマンドラインに"powershell.exe"を、引数に"-file hoge.ps1"を指定して、みたいなまわりくどいことをする必要がありました。しかし新しく追加されるPSScheduledJobモジュールに含まれるコマンドレット群はこの問題を解消します。PowerShellスクリプト(.ps1)あるいはスクリプトブロックをPSScheduledJobとして直接タスクスケジューラに登録できるようになり、PowerShellとタスクスケジューラのシームレスな連携を実現します。こちらはWindows 8/Server 8に付属のモジュールではなく、PowerShell 3.0に付属のモジュールなので、Win7などでも使用可能になる予定です。
使用例を見ていきましょう。
$triggers = @() $triggers += New-JobTrigger -at "2012/01/01 11:11:10" -Once $triggers += New-JobTrigger -at "10:00" -Daily $sb = { "This is Scheduled Job." Get-Date } Register-ScheduledJob -ScriptBlock $sb -Trigger $triggers -Name ScheduledJobTest1
まずNew-JobTriggerコマンドレットによってトリガー(具体的には実行時刻など)を定義します。ここでは決められた時刻に1回実行するものと、毎日同じ時刻に実行するものの2つを定義してみました。そしてこれらの時刻に実行したい内容をスクリプトブロックに記述し、これらをRegister-ScheduledJobコマンドレットで登録してやります。
するとこのスクリプトブロックはタスクスケジューラに登録され、指定時刻になると指定したスクリプトブロックの内容が実行されます。このタスクは「タスクスケジューラ― ライブラリ\Microsoft\Windows\PowerShell\ScheduledJobs」に登録されています。
このタスクのアクションは具体的には次のようになっています。
powershell.exe -NoLogo -NonInteractive -WindowStyle Hidden -Command "Import-Module PSScheduledJob; Start-Job -DefinitionName 'ScheduledJobTest2' -DefinitionPath 'C:\Users\Administrator\AppData\Local\WindowsPowerShell\ScheduledJobs' -WriteToStore | Wait-Job"
これによると、指定時刻に実際にタスクスケジューラによって実行されるのはpowershell.exeであり、Start-Jobコマンドレットを使って登録したスケジュールをPowerShellのジョブとして実行していることがわかります。Start-Jobコマンドレットの-DefinitionNameパラメータなどはPSScheduledJobのために追加されたもので、これによりRegister-ScheduledJobが出力したPSScheduledJob定義をファイルから読み込んでジョブとして実行できるようになっています。PSScheduledJob定義とジョブの出力は-DefinitionPathで指定されているフォルダの下にxmlファイルとして保存されているので興味がある方は覗いてみるといいかもしれません。
さて、スケジュールしたジョブの実行結果はどうやって受け取ればいいのでしょうか。実はこれはすごく簡単で、PSScheduledJob(ここではScheduledJobTest1という名前で定義しました)がタスクスケジューラによって一度以上実行された後は、
$job=Get-Job -name ScheduledJobTest1
とすることでJobオブジェクトとして取得することができるようになります。あとは通常のジョブと同じ取り扱いができるので、
$job|Receive-Job
などで実行結果を取得できます。
ちなみにPSScheduledJobはそれを定義したインスタンス以外でも参照することができます。具体的にはpowershell.exeでジョブをスケジューリングして終了→また別のpowershell.exeを立ち上げてimport-module PSScheduledJobしたあとGet-Job|Receive-JobしてPSScheduledJobの結果を参照、みたいなことができます。
ここで紹介した一連の操作ではスクリプトブロックをPSScheduledJobにしましたが、Register-ScheduledJobコマンドレットの-FilePathパラメータを用いれば.ps1ファイルをPSScheduledJobとして登録することも可能です。
現行バージョンのPowerShellはとにかく起動が遅いため、タスクスケジューラにスクリプトを登録しても実行が始まるまで何十秒も待たされるなどはざらでしたが、PSv3は起動がずいぶん速くなり、スペックや状況にもよるとは思いますがpowershell.exeの起動後ほんの数秒でスクリプトが走り始めます。この速度のおかげもあってPSScheduledJobはきっととても有効に機能するんじゃないかと思います。
おわりに
今回はPowerShell 3.0で増強されるバックグラウンドジョブ関係の機能をまとめてみました。これらの新機能のおかげで、時間のかかる処理や定期実行する処理を扱うのが飛躍的にやりやすくなりそうです。PowerShell 3.0で追加される機能は他にもたくさんあって、このブログでもいつか全部紹介したいと思ってるのですが、今回取り上げたジョブ関係はその中でもかなり重要な機能増加を多く含んでいると言えるでしょう。PowerShell 3.0やWindows 8/Server 8のリリースに備えてジョブ関係から予習しておくのは悪くないと思いますよ。
なんか25日のアドベントカレンダーのうち3回もバックグラウンドジョブネタをやって、PSアドベントカレンダーというより私だけ一人でPSジョブアドベントカレンダーをやってる感じでちょっと申し訳ないんですが、どうか許してください。そして前回は今回で終了するって言ってたんですが、実はまだジョブ関係の小ネタが残ってるので最終日25日にさせてください。では今日のところはこのへんで。明日はwaritohutsuさんの登場です。よろしくお願いします。
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