2015/12/15
Web APIを利用する
この記事はPowerShell Advent Calendar 2015の15日目の記事です。
はじめに
前々回と前回は、PowerShellによるWebスクレイピングの具体的手法についてまとめました。ただ、スクレイピングはあくまで最後の手段であり、Webから何らかの文字列情報を取得するには、Web APIを用いるのが本道かと思います。
今回はPowerShellでWeb APIを用いるお話です。
Web APIとは
Web APIというのは、その名の通り、プログラムからWeb上のデータを取得したり、何らかのサービスの機能を実行したりするための、呼び出し方式を定めた規約です。
Web APIでは、HTTPリクエストに呼び出したい機能の内容を指定し、結果をHTTPレスポンスとして受け取るというのが一連の流れになります。
Web APIの主な実装方式としてはSOAPとRESTがありますが、このうち、XMLでリクエストを組み立てるSOAPは最近は廃れてきた感じです。
(PowerShellではSOAP APIはNew-WebServiceProxyコマンドレットで対応しています。が、今回は略。参考:PowerShell: ◆空港の場所と天気を調べる(New-WebServiceProxy))
最近はWeb APIといえばREST(REpresentational State Transfer) APIを指すことが殆どです。REST APIでは操作の対象となるリソース=URI(エンドポイントという)、呼び出し方式=HTTPメソッド(GET:データの取得, POST:データの作成, PUT:データの更新, DELETE:データの削除)、操作に対するパラメータ=クエリストリング(GETの場合)もしくはリクエストボディ(POSTの場合)、結果の返却=HTTPレスポンス(JSON、XML等)となるのが基本です。
また、RESTの呼び出しは基本的にステートレスなものとなります。要はセッション情報を持たない≒cookieを使わない、ってことです。
PowerShellではREST APIを簡便に利用するためにInvoke-RestMethodコマンドレットが用意されています。(ただしPowerShell 3.0から)
Invoke-RestMethodコマンドレットのパラメータ指定
Invoke-RestMethodコマンドレットのパラメータについては、実は前々回に取り上げたInvoke-WebRequestコマンドレットと同じです(IEのパーサーを使うことはないので、-UseBasicParsingも無いですが)。ただしREST APIの形式は前述の通りなので、利用するパラメータは限られてきます。具体的には
データ取得の場合
$response = Invoke-RestMethod -Uri エンドポイント(パラメータを含む) -Method GET
データ作成、更新の場合
$response = Invoke-RestMethod -Uri エンドポイント -Method POST -Body パラメータ(連想配列あるいはJSONやXML等)
となるかと思います。
その他にOAuth等の認証情報を指定する場合は、-Headers @{Authorization="認証情報"}のような指定も必要になることがあります。
Invoke-RestMethodコマンドレットのレスポンス
Invoke-RestMethodコマンドレットがInvoke-WebRequestコマンドレットと異なる最大のポイントは、レスポンス文字列の種類によって、自動的に出力オブジェクトの型が切り替わるところです。
私の調べた限りでは以下のような対応になっているようです。
レスポンス文字列の種類 | 出力型 |
XML | XmlDocument |
RSS/ATOM | XmlElement |
JSON | PSCustomObject |
プレーンテキスト | string |
利用の具体例
AED検索
Microsoft MVPのはつねさんが公開されている、AED検索はREST APIでAEDの所在地情報を検索し、JSONで結果を得ることができます。
例えば兵庫県芦屋市のAED一覧を取得するには、
$response = Invoke-RestMethod https://aed.azure-mobile.net/api/aedinfo/兵庫県/芦屋市/ $response | Format-Table Latitude, Longitude, LocationName, @{L = "Address"; E = { "$($_.Perfecture) $($_.City) $($_.AddressArea)" }} -AutoSize
のようにします。
ここで$responseには、JSON形式のデータをパースしてPSCustomObject化したデータが格納されるので、あとはFormat-Tableコマンドレットで見やすい形で出力してあげれば良いでしょう。
結果はこんな感じです。
AED検索APIと、去年のアドベントカレンダーで紹介した、Windows 位置情報プラットフォームを用いて現在位置を取得するGet-GeoCoordinate関数を併用して、「現在位置の最寄りにあるAEDをGoogle MAP上で表示する」なんてこともできます。
$location = Get-GeoCoordinate $response = Invoke-RestMethod "https://aed.azure-mobile.net/api/NearAED?lat=$($location.Latitude)&lng=$($location.Longitude)" Start-Process "http://maps.google.com/maps?q=$($response.Latitude),$($response.Longitude)"
ここではREST APIにQueryStringでパラメータ(経度、緯度)情報を渡しているところと、レスポンスから生成されたオブジェクトのプロパティ値をマップ表示の際のパラメータとして利用しているところに注目してください。
RSS取得
RSSやATOMもREST APIの一種と考えて良いと思います。
ここではこのブログのRSSを取得する例を示します。
$response = Invoke-RestMethod http://winscript.jp/powershell/rss2/ $response | select @{L = "Title"; E = "title"}, @{L = "Url"; E = "link"}, @{L = "PublishDate"; E = {[DateTime]::Parse($_.pubDate)}}, @{L = "Description"; E = { ($_.description -replace "<.+?>"). PadRight(50).Substring(0,50).TrimEnd() + "..." }}| Format-List
Descriptionの加工がやや適当(HTMLタグっぽいところを削除して50文字に切り詰めてるだけ)ですが、少し見やすくしています。結果は以下のように表示されます。
RSSの結果は、1エントリがXMLElement型のオブジェクトとして出力されるので、データの取扱いが比較的楽だと思います。
レスポンスがXMLなREST APIの良い例がなかったので省略してますが、基本的には前回取り上げた、XHTMLをXMLとしてパースする方法と同じやり方です。ただInvoke-RestMethodの場合は[xml]型アクセラレータによる変換は不要で、いきなりXmlDocumentオブジェクトが得られます。
現状の問題点
レスポンスがコールバック関数つきのJSONP形式であるとかで、JSON、XML、RSS/ATOMのいずれの形式にも適合しない場合はプレーンテキストとして出力されてしまいます。
その場合は、出力文字列を適宜加工した後に、[xml]型アクセラレータや、ConvertFrom-Jsonコマンドレット等により手動でオブジェクト化するようにしてください。もっとも、その場合は敢えてInvoke-RestMethodを使わずInvoke-WebRequestで充分ですが。
あとWeb APIというのは大抵(特にPOSTの場合)、認証を要するのですが、最近よくあるのはTwitter等でもおなじみのOAuth認証です。ところがOAuth認証は結構めんどくさい処理で、何らかのライブラリを使わないとしんどいです。残念ながらPowerShellの標準コマンドレットには存在しないので、自前で頑張って書くか、既存のライブラリやコマンドを利用することになるかと思います。
今回そこまで説明できませんでしたが、また機会があれば。
2014/12/24
PowerShellで位置情報を取得する
はじめに
この記事はPowerShell Advent Calendar 2014の24日目の記事です。
今回は、Windows 8から追加されたOSの機能である、「Windows 位置情報プラットフォーム」をPowerShellから呼び出して、位置情報(緯度、経度)を取得してみよう、という話になります。
Windows 位置情報プラットフォームとは
Windows 8から、「Windows 位置情報プラットフォーム」という機能が追加され、アプリケーションから現在位置情報(緯度、経度など)をAPIで取得できるようになっています。
Windows 位置情報プラットフォームでは、位置情報をGPSがあればGPSから、なければWi-Fiの位置情報あるいはIPアドレスなどから推定して取得します。すなわち、GPSがない場合でも位置情報を取得できる、いわば仮想GPSの機能がデフォルトで備わっているのがミソです。
(注:Windows 7にも「Windows センサー&ロケーションプラットフォーム」というのがありましたが、OSデフォルト機能としては仮想GPSはありませんでした。今は亡き、Geosense for Windowsというサードパーティー製アプリを追加すると仮想GPS使えたんですけどもね。あとWindows Phone?知らない子ですね…)
PowerShellでWindows 位置情報プラットフォームを利用する
さて、Windows 位置情報プラットフォームをPowerShellで使うには、.NET4.0以上に含まれている、System.Device.Location名前空間配下に含まれるクラスの機能を用います。アセンブリ名としてはSystem.Deviceとなります。
以下のような関数Get-GeoCoordinateを定義します。
Add-Type -AssemblyName System.Device function Get-GeoCoordinate { param( [double]$Latitude, [double]$Longitude ) if(0 -eq $Latitude -and 0 -eq $Longitude) { $watcher = New-Object System.Device.Location.GeoCoordinateWatcher $sourceId = "Location" $job = Register-ObjectEvent -InputObject $watcher -EventName PositionChanged -SourceIdentifier $sourceId $watcher.Start() $event = Wait-Event $sourceId $event.SourceEventArgs.Position.Location Remove-Event $sourceId Unregister-Event $sourceId } else { New-Object System.Device.Location.GeoCoordinate $Latitude,$Longitude } }
関数実行前に、まずAdd-Type -AssemblyName System.Deviceを実行して必要なアセンブリをロードする必要があります。
関数本体ではまず、System.Device.Location.GeoCoordinateWatcherオブジェクトを生成します。このオブジェクトのStartメソッドを実行すると、Windows 位置情報プラットフォームにアクセスして、位置情報の変化を監視します。位置情報の変化を感知すると、PositionChangedイベントが発生し、取得した位置情報を、イベントハンドラの引数にGeoPositionChangedEventArgs<T>オブジェクトとして返します。
さて、PowerShellでは、.NETクラスのイベントを取得するには、Register-ObjectEventコマンドレットを用い、イベントを「購読」します。
イベントが発生するたびに何かの動作をする、というような場合では、Register-ObjectEvent -Action {処理内容}のようにして、イベントハンドラを記述するのが一般的です。が、今回は位置情報の変化の最初の一回(つまり、初期値の取得)さえPositionChangedイベントを捕まえればOKなので、-Actionは使用しません。
代わりにWait-Eventコマンドレットを用い、初回のイベント発生を待機するようにしています。Wait-Eventコマンドレットは、当該イベントを示すPSEventArgsオブジェクトを出力します。
PSEventArgsオブジェクトのSourceEventArgsプロパティには、当該イベントのイベントハンドラ引数の値(ここではGeoPositionChangedEventArgs<T>オブジェクト)が格納されているので、あとはそこから.Position.Locationと辿ることで、位置情報を格納したGeoCoordinateオブジェクトが取得できます。
(注:あとで知ったんですけど、GeoCoordinateWatcherクラスには、同期的に位置情報を取得するTryStartメソッドというのがあって、これを使えばイベント購読は実は不要でした…まぁいっか)
なお、関数のパラメータとしてLatitude(緯度)、Longitude(経度)を指定すると、現在位置ではなく、指定の位置を格納したGeoCoordinateオブジェクトを生成するようにしています。
Get-GeoCoordinate関数の使い方
事前にコントロール パネルの「位置情報の設定」で「Windows 位置情報プラットフォームを有効にする」にチェックを入れておきます。
あとはGet-GeoCoordinateをそのまま実行するだけです。
Latitude : 34.799999 Longitude : 135.350006 Altitude : 0 HorizontalAccuracy : 32000 VerticalAccuracy : NaN (非数値) Speed : NaN (非数値) Course : NaN (非数値) IsUnknown : False
このように現在位置が表示されるかと思います。といっても、緯度、経度が表示されたところでちゃんと取得できてるのかよく分からないので、以下のような簡単な関数(フィルタ)を定義しておきます。
filter Show-GoogleMap { Start-Process "http://maps.google.com/maps?q=$($_.Latitude),$($_.Longitude)" }
このフィルタを使うと、指定の緯度経度周辺の地図を、標準のWebブラウザで開いたGoogleマップ上に表示してくれます。使い方はこんな感じ。
Get-GeoCoordinate | Show-GoogleMap
現在位置が表示されましたでしょうか? 位置測定に用いたソースによってはkmオーダーでズレると思いますが、それでも何となく、自分がいる場所が表示されるのではないかと思います。
なお、先ほども書いたように、パラメータで任意の緯度、経度を指定することも可能です。この関数だけではあんまり意味を成しませんが…
Get-GeoCoordinate 35.681382 139.766084
まとめ
PowerShellでも「Windows 位置情報プラットフォーム」を使って現在位置が取れるよ、という話でした。あんまりPowerShellでSystem.Device.Locationとかを使っているサンプルを見かけないので、何かの参考になれば幸いです。あとPowerShellでのイベントの扱い方についても復習になるかと。
ところでこうやって取得した位置情報を使って、Web APIを呼び出して活用しよう、というようなネタを書くつもりだったんですが、長くなったんでまたの機会としましょう。ではでは。
Copyright © 2005-2018 Daisuke Mutaguchi All rights reserved
mailto: mutaguchi at roy.hi-ho.ne.jp
プライバシーポリシー