2017/12/01

この記事はPowerShell Advent Calendar 2017の1日目です。

毎年恒例のPowerShell Advent Calendar、今年も始まりました。ここ数年は私がトップバッターを務めさせていただいて、1年間のPowerShell界隈の出来事をさくっとまとめてみています。→2016年2015年

昨年2016年はPowerShell 10周年の年であり、PowerShell 5.1、Windows Server 2016、Nano ServerとPowerShell Core Editionが各々正式版としてリリースされ、さらにはPowerShellがオープンソース化、マルチプラットフォーム展開を始めるという大きな変革があった年でした。

今年2017年は昨年ほど大きな変化はないとはいえ、昨年のOSS化からのマルチプラットフォーム展開を着実に進行させた年だと言えると思います。

以下、いくつかトピックを紹介します。

WMF 5.1インストーラーの登場

PowerShell 5.1を含むWMF (Windows Management Framework) 5.1は、Windows2016に同梱され、昨年8月にリリースされたWindows 10 Anniversary Updateにも同梱されました。今年1月に公開されたWMF5.1のインストーラーは、下位OS(Windows 7/8.1/Server 2008 R2/2012/2012 R2)のためのものです。

なお、Win10/2016に同梱のPester(テストフレームワーク)やPSReadline(コンソール入力支援)についてはWMF5.1には含まれていないので、別途PowerShellGetでインストールするのがお勧めです。

Azure Cloud ShellでのPowerShell サポート

Webブラウザ上で動作するAzureの管理用シェルである、Azure Cloud ShellではまずBashがサポートされていましたが、今年9月にPowerShellもサポート(まだプレビューですが)されました。

自動的に認証された状態で最新のAzure PowerShellのコマンドが使え、AzureのリソースにAzure:ドライブを介してアクセスすることが可能です。

注意点があって、このPowerShell版Azure Cloud Shell、どうも現バージョンでは(Nano Serverではなく)Windows Server Coreのコンテナ上で動作しているらしく、Bashに比べ起動が若干遅いのと、実体はPowerShell CoreではなくWindows PowerShell 5.1であることはちょっと念頭においておいたほうがいいかもしれません。

これ、PowerShell CoreではまだAzure PowerShellの全機能がサポートされてないからだと思うんですが、今後に期待ですね。

PowerShell for Visual Studio Code 正式版リリース

先だってオープンソース化された、マルチプラットフォーム対応のコードエディタであるVisual Studio CodeでPowerShellスクリプトの開発を行うためのExtension、PowerShell for Visual Studio Codeの正式版(1.0)が5月に公開されました。なお、現時点での最新バージョンは1.5.1となっています。

当初は、PowerShellに付属の標準スクリプト開発環境、PowerShell ISEの方が多機能だったようにも思いますが、今はもう完全にISEの機能を追い越したんじゃないかと思います。シンタックスハイライト、インテリセンス、デバッグ、コンソールといった基本機能はもちろん、Gitによるバージョン管理もVSCode自体でサポートされていることに加え、静的解析機能を提供するPowerShell Script Analyzer、テストフレームワークのPester、プロジェクト管理機能を提供するPlasterなどが統合されており、本格的な開発環境となっています。

また当然ではありますが、マルチプラットフォーム対応なので、WindowsではWindows PowerShell 、LinuxやMacではPowerShell Coreの開発が各々可能です。

公式ブログでのアナウンスによれば、今後ISEがなくなることはありませんが、ISEに新機能が追加されることはなくなり、PowerShell for VSCodeの開発に注力されることになります。ISEはとにかく標準添付である(GUI有効ならサーバーOSでも動く!)という強みがあり、シンプルなスクリプト記述であればそこそこ便利に使えるので、これからもシチュエーションに応じて使い分けて行けば良いのかなと思います。

PowerShell Core RCのリリース

昨年OSS化したPowerShell Core 6はα版として開発が続いていましたが、今年5月にはβ版となり、先月(11月)、ついにRC(Release Candidate)となりました。6.0.0のGAリリースは来年1月になるそうです。

OSS化直後からRCに至るまでの変更点は多岐に渡り、とても一言で説明できるものではないですが、ポイントとしては以下の3点に集約されるんじゃないかと思います。

  1. PowerShellが長年抱えていた問題点の洗い出しと修正

    PowerShellがOSS化した当初は、ほとんどがWindows PowerShell 5.1のコードそのままであったと言ってよいかと思います。10年以上増改築が繰り返されたコードが突如、全世界に公開されたわけです。コミュニティの力でバグや変な仕様といった問題点が洗い出され、どんどん修正されていきました。
    また、不足していると思われる機能はどんどん追加されました。既存コマンドレットのパラメータが増えるというパターンが多かったように思います。

    特筆すべきは、破壊的変更であっても妥当性があれば躊躇せずに取り入れていったことかと思います。これは英断ではありますが、一方でWindows PowerShell 5.1とPowerShell Coreでは細かいところで非互換性が色々出ていますので、移行の際には注意を要します。

  2. マルチプラットフォーム対応

    前述の通り、OSS化した当初のPowerShell 6.0は、ほぼWindows PowerShell 5.1なので、Windowsでしか動作しない部分が多々ありました。それをLinuxやMac環境でも動作するように多くの修正が加えられました。

    ところで、PowerShell 6.0は当初、条件付きコンパイルにより、Windows用に.NET Framework(Full CLR)をターゲットにして、Desktop Edition相当のPowerShellをビルドすることが可能でした。

    しかしβ版になったタイミングで、OSS版PowerShell 6.0は、「PowerShell Core 6.0」すなわち、「.NET Core上で動作するPowerShell Core」であることが明確にされました。よってFull CLRターゲットのビルドはできなくなり、β6ではついにFull CLR対応のコードはすべて削除され、Core CLR対応のコードのみとなりました。

  3. Windows PowerShell用コマンドレットの呼び出し

    PowerShell Core 6.0にはいくつかのコマンドレットが同梱されていますが、Windows PowerShell 5.1に含まれているすべてのコマンドレットを網羅しているわけではありません。また、WindowsやWindows Serverの管理のために提供されている、OS付属のモジュール群もCore 6.0には含まれておらず、α版の段階では実行も不可能(だったはず)でした。

    β1からターゲットが.NET Core 2.0に移行したことにより、.NET Standard 2.0がサポートされました。このことによって、Windowsに付属の数千ものコマンドレットを初めとするWindows PowerShell用コマンドレット(要はFull CLRをターゲットとしてビルドされたもの)のうち、.NET Standard 2.0に含まれるAPIしか使われていないものであれば、原理的にはPowerShell Coreでも実行可能になりました。

Windows PowerShellの今後

さて、PowerShell Core 6.0がまもなく正式版リリースということですが、では従来のWindows PowerShellはどうなるのか、という話について。

公式ブログのアナウンスによれば、Windows 10やWindows Server 2016に付属のWindows PowerShell 5.1については、今後もサポートライフサイクルに則り、重大なバグフィックスやセキュリティパッチ提供等のサポートは継続されます。もちろん下位バージョンのOS/Windows PowerShellも同様です。

しかしながら、Windows PowerShellに新機能が追加されることは今後はなく、開発のメインはPowerShell Coreへと移行します。つまりは、PowerShell Coreの開発の中で追加された新機能、変更点、バグフィックスについては、基本的にはWindows PowerShellとは無関係ということです。

また、現状ではPowerShell CoreはWindows PowerShell環境に追加インストールし、サイドバイサイド実行が可能となっていますが、将来的にPowerShell CoreがWindowsに同梱されるかどうかについては言及されておらず、今のところは不明です。

以下は私見になります。

このような状況で、Windows PowerShellユーザー、とりわけWindows Serverの管理はするが、Linuxとかは特に…というユーザーはこれからどうすべきか?という点は割と悩ましいところだと思います。個人的には、WindowsやWindows Serverを管理するスクリプトが現時点であるなら、それを無理に今すぐCore対応にする必要はないと思います。現時点で今すぐCoreに移行すべき理由というのはとくに無いと感じます。Coreで追加、改善された機能はあるものの、Coreには無い機能もたくさんあるからです。
また新規にスクリプトを作る場合でも、対象がWindowsに限定されるのであれば、Windows PowerShell用に作れば良いのではないかと。OS付属のコマンドレットの動作は確実に保証されているわけですから。

ただし、ご存じの通りWindows10とServer 2016は半期に一度の大型アップデートで新機能が次々追加されていきます。その過程でPowerShell Coreが含まれるようになったり、Coreのみ対応のコマンドレットが追加される可能性は無きにしもあらずなのではないかとも思います。なので、Coreの状況をチラ見しつつ、未来に備えておく必要はあると思います。Windows10/Server2016の「次」も見据えて。

それとPowerShellでWindowsもLinuxも面倒みていきたい、という野心がある方は、Coreを採用していくのがいいのではないかと思います。ただし、現状しばらくは茨の道ではあるとは思います。

あとはスクリプトやモジュールを作成し公開する方は、より多くの環境で使われるように、可能であればCore対応を進めるのは悪くないんじゃないかと思います。

おわりに

他にもWin10/Server2016におけるPowerShell 2.0の非推奨化の話とか、DSC Core構想とか、なにげに結構いろいろ話題はありました。

さて、Windows PowerShellとしては一端落ち着いた感もある界隈ですが、PowerShell Coreとしてはこれからも活発に動いていくものと思います。注目していきたいですね。

そんな2017年の締めくくり、今年はどんな記事が集まるでしょうか。PowerShell Advent Calendar 2017の参加、お待ちしております。

2016/12/01

この記事はPowerShell Advent Calendar 2016の1日目です。

PowerShellアドベントカレンダー、今年も始まりました。みなさまのご協力の甲斐あって、過去5年間はすべて完走していますが、今回もできれば完走を目指していく感じでまいりましょう。色々な立場の方からの視点でPowerShellを俯瞰できるこのイベント、私自身も毎年楽しんでおります。

さて、去年も2015年のPowerShellをまとめる的な記事から始めたわけですが、今年も去年に負けず劣らず、大変革の年だったと思いますので、今回も1年を振り返るところからスタートしましょう。

Bash on Ubuntu on Windows の登場

去年のPowerShell5.0登場、周辺モジュールのOSS化といった大きな動きがあってから、今年の前半は少しおとなしめ?の界隈でした(5.0のインストーラーにバグがあって一時非公開とか小騒動はありました)が、まず驚いたのがPowerShellそのものではなくて、Windowsで動くbashが登場したというトピックですね。発表があったのは今年の3月末の事です。

bashとは言わずと知れた、Linuxの標準シェルですが、これをWindows 10の"Windows Subsystem for Linux"という仕組みの上で動作するUbuntu上で動作するbashとして動作させてしまおうというものです。なので正式には"Bash on Ubuntu on Windows"という名称になります。

このbash、Windowsのシステムを管理するためのものではなく、Web等の開発用途を想定して提供されたものです。なので本来的にはPowerShellとは関係ないのですが、当初は色々と誤解が飛び交ったように思います。曰く、MSはPowerShellを捨ててやっとbashを採用した。PowerShellとは何だったのか。等々…。

これらの誤解や疑問には、PowerShellの公式ブログで、bashという新たなシェルがWindowsに追加されたが、両者は並立するものだ、PowerShellはこれからも進化するよ!といった異例の公式見解が示されたりもしました。

Bash on Ubuntu on Windowsは、後述するPowerShell 5.1とともに、8月リリースのWindows 10 Anniversary Updateで正式に利用可能となりました。

PowerShell 5.1 の登場

今年7月には、PowerShell 5.1 / WMF (Windows Management Framework 5.1)のプレビュー版が登場しました。[リリースノート]

そもそもPowerShell 5.0はWindows Server 2016のためのシェルとして開発が進められていたはずですが、先にWindows 10に同梱されたものの、2016正式版までやや時間を要すこととなりました。その間にPowerShell 5.0にはいくつかの機能や改良が加えられ、結局、5.1というバージョンが登場するに至ったものと思われます。

PowerShell 5.1は、前述の下位OS用のプレビュー版の他、今年8月初めのWindows 10 Anniversary Updateという大型アップデート適用で使えるようになりました。そしてその後、今年10月に正式版が登場したWindows Server 2016にも(もちろん)同梱されました。

5.1ではローカルユーザーやグループを扱うコマンドレット等が(ようやく?)追加されたりもしています。が、一番大きな変更点は、Windows Server 2016に追加された新機能である、Nano Server用のPowerShellが、従来のPowerShellと分離した点でしょう。

従来の、.NET Frameworkで動くフル機能のPowerShellは、5.1からは"Desktop Edition"と呼ばれます。対して、コンテナに最適化させるため、フットプリントを最小にしたNano Server(や、Windows IoT等)で動作するコンパクトなサブセット、"Core Edition"が新たに登場しました。

Core Editionは、.NET Frameworkのコア部分を実装した、.NET Core上で動作します。ちなみに.NET CoreはOSS(オープンソースソフトウェア)となっています。

Core Editionはサブセット版というだけあって、今となっては若干レガシーにもなった一部のコマンドレットが使えないことを初め、いくつかの制限事項もありますが、概ね、Nano Serverの管理に必要十分な機能を保っているのではないかと個人的には思っています。

PowerShell オープンソース化

今年、PowerShell界をもっとも震撼させたニュース、それは間違いなく、今年8月に実施された、PowerShellのオープンソース化でしょう[GitHub]。周辺モジュールのOSS化など、これまでの流れからいくと、確かに本体OSS化の機運は高まっているように個人的にも感じていましたが、OSS化するとしてもCore Edition部分止まりだろうなーと思っていたら、まさかのDesktop Editionを含んだ全体だったので驚きました。

そしてOSS化の副産物(と個人的には感じる)である、PowerShell on Linux、PowerShell on Macが登場しました。これも一部の方、特にWindowsやMicrosoft製品を普段あまり使われない方に、割と大きなインパクトを与えていたように思います。

PowerShellがオープンソースになったこと、"PowerShell for every system!"になったことの意義についてはちょっと語りつくすには時間が足り無さそうですが、敢えて現実ベースの話を先にすると、一般ユーザー(PowerShellをシステム管理に用いている管理者)にとって、すぐに世界が変化するかというとそうではないんじゃないかという気がしています。

というのも、現在のところOSS版のPowerShellのバージョンは「6.0」とされているものの、まだα版の段階で、基本機能はほぼほぼ5.1と変わらないです。OSS版が改良されても、別に今Windowsで使っているPowerShellがすぐに強くなるわけではありません(現在のところ、サイドバイサイドでインストールする)。オープンソース、マルチプラットフォーム展開を始めたといっても、それは現在の所、PowerShell本体とコアモジュールに留まっていて、コマンド数もたかだか数百個程度でしょう(もうちょっとあるかな?)。PowerShellでOS、サーバー、アプリ、インフラを管理するには、専用のコマンドが山ほど必要になってきますが、それらは今まで通り、Windowsの製品にしか含まれないものです。そのような状況で、たとえばLinuxを管理するのには自分でコマンドを作るか、普通にLinuxのコマンドを呼ぶか…あれそれって別に普通のシェルスクリプトでいいんじゃ…とか。

今後は、OSS側での成果が、Windows / Windows Server上のPowerShellに反映され、両者は一本化される、はず、です、たぶん、が、それはまだアナウンスもなく、いつ、どのような形でもたらされるかは不明と云わざるを得ません。

もちろん、この状況はあくまで現時点の状況です。ゆくゆくはPowerShellで、WindowsもLinuxもMacも一貫したコマンド&スクリプトで管理できる日が来るかもしれませんね。現在のところは、PowerShellの謎挙動に遭遇したとき、ソースを合法的に眺めて思いを馳せることができるようになったのが大きいかと個人的には思います。もちろん腕に覚えのある方は、(ルールに従って)どしどしプルリクエストを投げて、PowerShellを自ら育てていただければな、と思います。

PowerShell 10周年

とまぁ、激動の1年が終わりかけた先日の11/14には、PowerShell 1.0が登場してちょうど10年ということで、PowerShell10周年イベントがあったりしました。思えば遠くへ来たものですね。

さてさて、PowerShellを取り巻く状況は刻一刻と変化し、去年と今年ではその傾向が顕著です。おそらく節目の年である今年の最後を飾ることになる、PowerShell Advent Calendar 2016を、どうぞよろしくお願い致します。

2011/12/19

はじめに

PowerShell Advent Calendar 2011の19日目の記事、そしてこれが私の記事では3回目となります。今回も前々回前回からの引き続きでバックグラウンドジョブについての話題です。前回までは現行バージョンであるPowerShell 2.0におけるバックグラウンドジョブの機能の使い方を解説してきましたが、今回はPowerShellの次期バージョンである3.0に追加される予定の機能のうち、ジョブ関係のものをピックアップしてみます。現在PowerShell 3.0を含むWindows Management Framework(WMF)3.0のCTP2が公開されています。またWindows 8 Developer Preview / Windows Server 8 Developer PreviewにはWMF3.0 CTP1相当のPowerShell 3.0が含まれています。

注意:本記事で取り上げた内容は製品のプレビュー版をもとに記述しています。そのためリリース版では内容が一致しない可能性があることをご承知おきください。

using:ラベル

前回、ジョブに値を渡す方法について解説しましたが、-argumentListに引数として渡すというのは正直めんどうです。呼び出し元のグローバル変数を直接ジョブ側から参照したいですよね。そこでPowerShell v3では新たに変数に付けるusing:ラベルというのが追加されました。このラベルをジョブのスクリプトブロック内で使うと、呼び出し元の変数を参照することができます。具体例。

$test="PowerShell 3.0"
Start-Job {$using:test}|Wait-Job|Receive-Job

とすると、「PowerShell 3.0」と表示され、たしかにジョブのスクリプトブロックから呼び出し元の変数を参照できていることがわかります。これは便利ですね。ただし残念ながらこの方法を使ってもスクリプトブロックをジョブに渡すことはできないようです。相変わらず文字列にキャストされてしまいました。

Receive-Jobコマンドレットの変更点

前々回に、Invoke-Command -asJobで複数リモートコンピュータに対してジョブを走らせた場合、そのジョブに対して$job|Receive-Jobがなぜか機能しない、と書きましたがこの問題が解決されています。そもそもなんでこの問題が発生していたのか、面白いのでちょっと解説します。

実はReceive-Jobコマンドレットの-locationパラメータに「パイプライン入力を許可する   true (ByPropertyName)」フラグがついていたのが原因でした。複数コンピュータに対して実行したジョブは子ジョブを複数持ちますが、親ジョブ自体は配列ではありません。そしてそのLocationプロパティには子ジョブが実行されているコンピュータ名が"remote01,remote02,remote03"のようなカンマ区切りの文字列として格納されています。よってこのジョブオブジェクトをパイプラインを通じてReceive-Jobコマンドレットに渡すと、ValueFromPipelineByPropertyName属性が付いている-locationパラメータにジョブオブジェクトのLocationプロパティの値が渡されますが、その値はカンマ区切りの文字列なので正しく解釈されず、結果として期待の動作をしなかったわけです。

v3ではReceive-Job -locationのValueFromPipelineByPropertyName属性が取り除かれ、問題なく動作するようになりました。

他の変更点としてはReceive-Jobにジョブが完了するまで待つための-waitパラメータが追加されました。が、$job|Wait-Job|Receive-Jobと違いが分からないかも…。

Get-Jobコマンドレットの変更点

Get-Jobに-filterパラメータが追加されました。連想配列でジョブにフィルタをかけられるものです。

Get-Job -filter @{State="Completed";Location="localhost"}

where-objectを使わずともフィルタできるので便利、かも。しかし個人的には-filterパラメータはいろんなコマンドレットで定義されているものの、使い方がそれぞれ異なるのがとてもとてもイヤです。まず覚えられないのでヘルプを引くところから始まっちゃいますので。パフォーマンスの関係上、Where-Objectを使うよりコマンドレット内部でフィルタしたほうが速くなるというのはわかるのですが、もう少しフィルタ方式に統一性を持たせられなかったんだろうかとか思いますね。

Get-Jobにはほかに-afterと-beforeというパラメータが追加されています。これは後述するPSScheduledJobの完了時刻をDateTimeで範囲指定し、フィルタするものです。

PowerShell Workflow

PowerShell3.0というかWMF3.0のおそらく目玉機能の一つがPowerShell Workflowです。文字通り、PowerShellでワークフローが記述できるようになります。

Workflowは関数の一種なのですが、長時間を要するタスクやリモート実行や並列実行などで使うことを主目的としているようです。functionキーワードの代わりにworkflowキーワードでワークフローを定義すると、自動的に実行対象コンピュータ名や資格情報といったパラメータが複数定義されるので、これらのパラメータを特に定義なしで利用することができます。またworkflow内ではparallelブロックを定義でき、その中に記述された各行は並列に実行されます。またfor/foreachステートメントで-parallelパラメータが利用可能になり、繰り返し処理やコレクションの列挙を並列して行うことができるようになります。

自動定義されるパラメータに-asJobがあり、これを利用するとworkflowをジョブとして実行できます。このジョブは通常のジョブとは違い、新たに追加されたSuspend-JobコマンドレットとResume-Jobを使うことによって、ジョブの一時中断と再開ができます。このジョブの中断と再開は、リモートコンピュータ上でワークフローを走らせてるときでも可能ですし、中断後リモートセッションが切断されたあとに再開することもできますし、リモートコンピュータがシャットダウンしても再起動後にジョブを再開することまでできてしまいます。これらはWMFにおけるリモート基盤を支えているWinRMの最新バージョン、WinRM3.0が実現している機能です。このようにセッションを再接続してもタスクを継続できるような接続をrobust(堅牢な), resilient(弾力性のある、障害から容易に回復する) connectionと称しているようです。

PowerShell WorkflowはWindows Workflow Foundation(WF)と密接な関係があり、WFのデザイナで作ったxamlをPS Workflowに変換したり(逆もできる?)、Invoke-Expressionでxamlを実行したりできるらしいです。WF側でもPowerShellの多くの機能がアクティビティとして使用できたりして、WFとPowerShellがWMFというシステム管理フレームワークの主要なパーツとして密に連携していくようです。このあたりの話はWFの専門家であるAhfさんがPSアドベントカレンダーの23日目にしてくださる予定なので、楽しみですね!

なおPS Workflowは従来のPSスクリプトとは異なった利用状況を想定しているため、あるいはWFの機能と合わせるため、PSスクリプトではできるのにPS Workflowではできないことがとてもたくさんあります。forの中でbreakやcontinueステートメントが使えないとかStart-Sleepは-Secondパラメータしか指定できない(ミリ秒単位でスリープかけられない)とか色々あります。そのうちPS WorkflowとPSスクリプトの違いというドキュメントが公開されるんじゃないかと思います。

ちなみにWinRM3.0のおかげでワークフローではない通常のリモートジョブでも、New-PSSessionで作成したセッションの中でジョブを実行した場合、そのジョブが動作しているコンピュータへのセッションを切断(Disconnect-PSSession)したあと、セッションに再接続(Connect-PSSessionやReceive-PSSession)すればジョブの結果を取得したりすることができます。またセッションを作製したインスタンス(powershell.exe)でそのセッションを切断すると、それ以降は別のインスタンスやコンピュータからそのセッションにConnect-PSSessionで接続することができます。

ScheduledTasksモジュール

PowerShell3.0が含まれる次期Windowsでは大量のモジュールが追加され、それらのモジュールに含まれるコマンドレットの総数はWindows 8でも2000を超える膨大な量になります。これはWindows 8やWindows Server 8では従来のコマンドプロンプトから実行するコンソールexeコマンドのほとんどすべてをPowerShellコマンドレットに置き換える措置のためです。もちろん従来のコマンドは互換性のために残されますが、netsh.exeなど一部のコマンドではPowerShellへの移行を促すメッセージが表示されたりするようになるようです。参考:Window 8の機能の概要 − @IT

ScheduledTasksモジュールというタスクスケジューラを扱うモジュールもWindows 8 / Windows Server 8に新しく追加されるモジュールの一つで、schtasks.exeを置き換えるものとなります。これまでPowerShellでタスクスケジューラを扱うにはschtasks.exeを使うか、WMIのWin32_ScheduledJobを使う必要があり面倒でしたが、このモジュールに含まれるコマンドレットを用いるとそれが容易に行えるようになります。たとえば「notepad.exeを毎日朝10:00に起動する。バッテリ駆動のときでも実行」というタスクを「test」という名前で登録するには、

$action = New-ScheduledTaskAction -Execute "notepad.exe"
$trigger = New-ScheduledTaskTrigger -At "10AM" -Daily
$setting = New-ScheduledTaskSettings -AllowStartIfOnBatteries 
New-ScheduledTask -action $action -trigger $trigger -setting $setting|Register-ScheduledTask -TaskName test

とすれば可能であるはずです。実はServer 8 Developer Preview版ではこのコードは機能しません。タスクのトリガを作成するNew-ScheduledTaskTriggerコマンドレットが正しいオブジェクトを作ってくれないのです。これは将来のバージョンできっと修正されるかと思います。ただトリガを定義する部分をはずせば(あんまり意味はないですが)このコードは動作するので、やり方はたぶんあってると思います。

Register-ScheduledTaskコマンドレットには-asJobパラメータがあり、タスクスケジューラへの登録をジョブとしてバックグラウンドで行うことができます。ScheduledTasksモジュールはWMIを利用してタスクスケジューラを操作するので、ほかのWMI関係のコマンドレットと同様ですね。

なおScheduledTasksモジュールはデフォルトでは読み込まれていないので、使用するには本来Import-Moduleコマンドレットを使用しなければならないところですが、PowerShell3.0のCmdlet Discoveryという機能によりImport-Moduleは実行しなくてもScheduledTasksモジュールに含まれるコマンドレットを利用することができます。Cmdlet Discoveryとは現在読み込まれていて実行可能なコマンドレットの中にない、未知のコマンドレットを実行しようとしたとき、Modulesフォルダに存在するモジュールから同名のコマンドレットが定義されているものを探し出し、発見できたらそのモジュールを読み込んだうえでコマンドレットを実行するという優れた機能です。初回だけモジュールの検索とロードの手順が実行されるので待たされますが、一度Cmdlet Discoveryによってモジュールがシェルに読み込まれればあとは快適にコマンドレットを実行できるようになります。

PSScheduledJobモジュール

ScheduledTasksモジュールは-asJobパラメータが定義されているくらいで実はそれほどPowerShellのジョブとは関係ないのですが、ScheduledTasksモジュールが内包しているPSScheduledJobモジュールはPowerShellのジョブ機能と大いに関係があります。

従来PowerShellスクリプトをタスクスケジューラに登録するにはコマンドラインに"powershell.exe"を、引数に"-file hoge.ps1"を指定して、みたいなまわりくどいことをする必要がありました。しかし新しく追加されるPSScheduledJobモジュールに含まれるコマンドレット群はこの問題を解消します。PowerShellスクリプト(.ps1)あるいはスクリプトブロックをPSScheduledJobとして直接タスクスケジューラに登録できるようになり、PowerShellとタスクスケジューラのシームレスな連携を実現します。こちらはWindows 8/Server 8に付属のモジュールではなく、PowerShell 3.0に付属のモジュールなので、Win7などでも使用可能になる予定です。

使用例を見ていきましょう。

$triggers = @()
$triggers += New-JobTrigger -at "2012/01/01 11:11:10" -Once
$triggers += New-JobTrigger -at "10:00" -Daily

$sb = {
    "This is Scheduled Job."
    Get-Date
}

Register-ScheduledJob -ScriptBlock $sb -Trigger $triggers -Name ScheduledJobTest1

まずNew-JobTriggerコマンドレットによってトリガー(具体的には実行時刻など)を定義します。ここでは決められた時刻に1回実行するものと、毎日同じ時刻に実行するものの2つを定義してみました。そしてこれらの時刻に実行したい内容をスクリプトブロックに記述し、これらをRegister-ScheduledJobコマンドレットで登録してやります。

するとこのスクリプトブロックはタスクスケジューラに登録され、指定時刻になると指定したスクリプトブロックの内容が実行されます。このタスクは「タスクスケジューラ― ライブラリ\Microsoft\Windows\PowerShell\ScheduledJobs」に登録されています。

このタスクのアクションは具体的には次のようになっています。

powershell.exe -NoLogo -NonInteractive -WindowStyle Hidden -Command "Import-Module PSScheduledJob; Start-Job -DefinitionName 'ScheduledJobTest2' -DefinitionPath 'C:\Users\Administrator\AppData\Local\WindowsPowerShell\ScheduledJobs' -WriteToStore | Wait-Job"

これによると、指定時刻に実際にタスクスケジューラによって実行されるのはpowershell.exeであり、Start-Jobコマンドレットを使って登録したスケジュールをPowerShellのジョブとして実行していることがわかります。Start-Jobコマンドレットの-DefinitionNameパラメータなどはPSScheduledJobのために追加されたもので、これによりRegister-ScheduledJobが出力したPSScheduledJob定義をファイルから読み込んでジョブとして実行できるようになっています。PSScheduledJob定義とジョブの出力は-DefinitionPathで指定されているフォルダの下にxmlファイルとして保存されているので興味がある方は覗いてみるといいかもしれません。

さて、スケジュールしたジョブの実行結果はどうやって受け取ればいいのでしょうか。実はこれはすごく簡単で、PSScheduledJob(ここではScheduledJobTest1という名前で定義しました)がタスクスケジューラによって一度以上実行された後は、

$job=Get-Job -name ScheduledJobTest1

とすることでJobオブジェクトとして取得することができるようになります。あとは通常のジョブと同じ取り扱いができるので、

$job|Receive-Job

などで実行結果を取得できます。

ちなみにPSScheduledJobはそれを定義したインスタンス以外でも参照することができます。具体的にはpowershell.exeでジョブをスケジューリングして終了→また別のpowershell.exeを立ち上げてimport-module PSScheduledJobしたあとGet-Job|Receive-JobしてPSScheduledJobの結果を参照、みたいなことができます。

ここで紹介した一連の操作ではスクリプトブロックをPSScheduledJobにしましたが、Register-ScheduledJobコマンドレットの-FilePathパラメータを用いれば.ps1ファイルをPSScheduledJobとして登録することも可能です。

現行バージョンのPowerShellはとにかく起動が遅いため、タスクスケジューラにスクリプトを登録しても実行が始まるまで何十秒も待たされるなどはざらでしたが、PSv3は起動がずいぶん速くなり、スペックや状況にもよるとは思いますがpowershell.exeの起動後ほんの数秒でスクリプトが走り始めます。この速度のおかげもあってPSScheduledJobはきっととても有効に機能するんじゃないかと思います。

おわりに

今回はPowerShell 3.0で増強されるバックグラウンドジョブ関係の機能をまとめてみました。これらの新機能のおかげで、時間のかかる処理や定期実行する処理を扱うのが飛躍的にやりやすくなりそうです。PowerShell 3.0で追加される機能は他にもたくさんあって、このブログでもいつか全部紹介したいと思ってるのですが、今回取り上げたジョブ関係はその中でもかなり重要な機能増加を多く含んでいると言えるでしょう。PowerShell 3.0やWindows 8/Server 8のリリースに備えてジョブ関係から予習しておくのは悪くないと思いますよ。

なんか25日のアドベントカレンダーのうち3回もバックグラウンドジョブネタをやって、PSアドベントカレンダーというより私だけ一人でPSジョブアドベントカレンダーをやってる感じでちょっと申し訳ないんですが、どうか許してください。そして前回は今回で終了するって言ってたんですが、実はまだジョブ関係の小ネタが残ってるので最終日25日にさせてください。では今日のところはこのへんで。明日はwaritohutsuさんの登場です。よろしくお願いします。

2009/06/30

Windows Server 2008 R2ではPowerShell v2が標準機能ですが、v2の目玉の一つとしてリモートでサーバーのPSを実行できる機能があります。

詳しくは、7/4の大阪のセッションでデモを交えてお話しできると思いますが、http://technet.microsoft.com/ja-jp/magazine/2008.08.windowspowershell.aspxを読んで予習しておくのもいいかと思います。

なお、この記事が書かれたときの最新バージョンのCTP2から変更点があり、コマンドレット名が若干変わっています。

New-RunSpace→New-PSSession

push-runspace→Enter-PSSession

pop-runspace→Exit-PSSession

さて、PSRemotingはWinRM2.0を用いたリモート通信なのですが、WinRM2.0は認証にKerberos認証を用います。Active Directoryにログオンしたクライアントから

New-PSSession ServerName

のようにすると、ログオン時の認証情報が用いられ、認証され、通信が始まります。しかし、ログオン時とは異なる認証情報を送る必要がある場合もあるので、そのときは-credentialパラメータを使います。

New-PSSession ServerName -credential (Get-Credential)

のようにすると、認証ダイアログが表示されるので、ユーザー名とパスワードを入れて認証情報を送りログオンすることができます。

元記事:http://blogs.wankuma.com/mutaguchi/archive/2009/06/30/176828.aspx

2009/06/08

むたぐちです。いろいろあってご無沙汰になっていますが、ぼちぼち復活中です。

1年間更新が途絶えていたWSH連載(@IT)が再開になりました。遅くなってすみませんです。

チェック式 WSH入門
第18回 FileSystemObjectオブジェクトを利用する(3)
http://www.atmarkit.co.jp/fwin2k/tutor/cformwsh18/cformwsh18_01.html

懲りずにネタを仕込んでますが気づいた方はしれっと流してくださいw

この連載記事も次回で最終回です。 @ITのWindows Server Insiderフォーラムではいつも上位PVをキープしているようでありがとうございます。

http://www.atmarkit.co.jp/fwin2k/

また、Windows 7とWindows Server 2008 R2の標準機能(コマンドプロンプトと同様に削除もできない)となるPowerShell ver2についていち早く紹介するセッションを7/4(土)わんくま大阪勉強会でやります。ぜひご参加ください!

http://www.wankuma.com/seminar/20090704osaka30/Default.aspx

おそらく、7を入れてみて多くの人が思うことは、まずタスクバーが分からないってのと、スタートメニューのアクセサリにあるPowerShellってなんぞ?ってなると思うんですよね。タスクバーはタスクバーのプロパティを適当に設定すればVistaライクになりますが、PowerShellはいきなり見てもなんだか分からないと思いますので、基礎をざっとやって、あとはver1からの変更点をお話します。

あと6/13わんくま大阪もスタッフとして参加しますのでよろしくですv

元記事:http://blogs.wankuma.com/mutaguchi/archive/2009/06/08/174534.aspx


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